ドローン初心者は何から始めるべきか?⑩ ~ドローンの賢い機能を知ろう~

この連載記事では、ドローンを始めようと思っている、又はドローンスクールに通いたいと思っている、又は最近ドローンスクールに入学した人、を対象に、不安の解消や今後のお役に立てるような「豆知識」を発信したいと思います。

第1回は練習の話、第2回は理解を深める話、第3回は基礎的な知識の話、第4回は歴史の話、第5回は消耗品の話、第6回・第7回は訓練を続ける話、第8回は法律の話、第9回は飛行前チェックの話、を紹介しました。

最終回の今回は、ドローンに搭載されている「賢い」機能について、紹介していきたいと思います。
ドローンが賢いといっても、最後に安全を確保するのは操縦者自身です。
第9回まで読んで知識と技能をきちんと身に着けた皆さんであれば、安全に制御できるはずです。

リターントゥホーム

ボタン一つでドローン(UAV)の離着陸地点に自動で戻ってくる「リターントゥホーム」は「賢い」機能の代表格です。
GPSが搭載されている機体であればほぼ搭載されているといっても過言ではありません。

前回「リターントゥホームの高度」で少しだけ紹介しましたが、下記の一連の動作を自動で行ってくれる機能です。

 ①一旦ある程度の高度まで上昇
 ②離陸地点まで自動で戻ってくる
 ③自動で着陸する

しかし、特性をよく知らずに多用すると事故につながることもあります
近畿地方整備局が公開しているニュースレターには、GPSが十分補足できていない状況のため離陸前にホームの位置がきちんと記録されていないのにリターン・トゥ・ホームをかけてしまったと思われる事例が掲載されています。(2ページ目の「事例1」を参照ください)

離陸前にはホームの位置がきちんと記録されているか、確認するようにしましょう

ただし、GPSが十分捕捉できていたとしてもリターン・トゥ・ホームは避けた方がいい場合もあります
それは、「自分が動いているとき」です。

例えば、船の上。海上でドローンを飛ばす機会は少ないかもしれませんが、うっかりリターン・トゥ・ホームをかけてしまうと、自分がいる位置に戻ってきてくれない場合がありえます。
そういったときは、フェールセーフ(プロポからの受信が途絶えたさいの挙動設定)は「ホバリング」にしておき、もしもの際は船で近くに寄るのがいいでしょう(クジラを撮影しに言った時に友人に教えてもらった方法です)。

リターントゥホームは、状況に応じて上手に使い分けましょう。

アクティブトラック

カメラがついているドローンで、画像解析機能がついているものの中に「アクティブトラック」という、自動追尾機能が入っている場合があります。
DJI製品などは、最近のものであれば大体この機能がついています。

最初に認識させた「人」を自動で追いかけていくものですが、セグウェイのような乗り物に乗っていても追いかけてきてくれます。
こちらの動画は、沖縄にある「ナガンヌ島」という無人島で、友人に撮影してもらったものです。
人が追いかけて撮影しているのかと思うほど、ぴったりとついてきてくれていることがわかります。

<図:アクティブトラック>※画像をクリックするとyoutube動画に遷移します

 

このように、ドローンには自動で操縦をしてくれるような機能が多く備わっています。

また、測量や点検の現場などでは「面的に網羅的に撮影する」ことが必要になるため、自動航行ソフトが充実してきています。

しかし、自動航行は扱いに気を付けないと事故につながる可能性があります
物件に接触しない飛行プランを立案する、緊急時には操縦者が中断して手動操縦により安全に着陸させるような体制をとる、などの安全管理が必要になります。

「賢い」機能だからといって、人間側がサボっていいわけではありません。
むしろ、手動による操縦がある一定のレベルに達した人だからこそ使いこなせる機能だと認識してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のまとめです。

・リターントゥホームという自動機能があるが、状況に応じて使うシーンを検討したほうが良い
・アクティブトラックという自動追尾機能がついているものもあるが、事故防止のための安全管理が必要

 

本連載「ドローン初心者は何から始めるべきか?」は、今回で最終回です。
ここまで読み進めて、知識をつけ、実践を通じて技能を身に着けた皆様であれば、かなりの自信がついたのではないでしょうか。

ぜひ今後も研鑽を積んでいき、安全を確保しながらドローンを楽しんでいってください。

 

<関連リンク>
近畿地方整備局「あんぜん」第294号 平成31年2月号
コラム#91:リターン・トゥ・ホームの落とし穴 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#98:リターン・トゥ・ホームの落とし穴②: , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
リサーチ#4:アクティブトラック , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」

<過去の「ドローン初心者は何から始めるべきか?」シリーズ>
ドローン初心者は何から始めるべきか?① ~プロポの選択と練習~
ドローン初心者は何から始めるべきか?② ~ドローンを理解しよう~
ドローン初心者は何から始めるべきか?③ ~ドローンの飛行原理を知ろう~
ドローン初心者は何から始めるべきか?④ ~ドローンの歴史を知ろう~
ドローン初心者は何から始めるべきか?⑤ ~ドローンの消耗品を知ろう
ドローン初心者は何から始めるべきか?⑥ ~ドローンの訓練を続けよう(前編)~
ドローン初心者は何から始めるべきか?⑦ ~ドローンの訓練を続けよう(後編)~ 
ドローン初心者は何から始めるべきか?⑧ ~ドローンの法律を知ろう~
ドローン初心者は何から始めるべきか?⑨ ~ドローンの飛行前チェックを知ろう~

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高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。