ドローン初心者は何から始めるべきか?⑨ ~ドローンの飛行前チェックを知ろう~

この連載記事では、ドローンを始めようと思っている、又はドローンスクールに通いたいと思っている、又は最近ドローンスクールに入学した人、を対象に、不安の解消や今後のお役に立てるような「豆知識」を発信したいと思います。

第1回は練習の話、第2回は理解を深める話、第3回は基礎的な知識の話、第4回は歴史の話、第5回は消耗品の話、第6回・第7回は訓練を続ける話、第8回は法律の話、を紹介しました。

今回は、実際に屋外でドローンを飛行させる前のチェック項目について、特に大事な点をお伝えしたいと思います。

最初に:「高度」という言葉に注意

飛行前のチェックをする際に、注意すべき言葉。

それは「高度」

この言葉の意味を誤解したままだとこのあとのチェック事項で混乱が起きる可能性があるので、まずはこれを解説したいと思います。

ドローン(UAV)を扱っている時、「高度」とはどこからどこまでの高さを表しているでしょうか?

わかりやすく考えるため、「高度30mを維持」と自動航行ソフトウェアに入力して実行したらどうなるかを示してみます。

 

ドローンの場合、通常は離陸した地点を0mとしたときの垂直方向の距離、と覚えておいてください。

この後出てくる「高度」も、離陸した地点を0mとしたときの垂直方向の距離ですので、「地面からの距離」とか「木の上からの距離」などと誤解しないようにご注意ください。

尚、これ以降はDJI製のドローンを扱う場合の「DJI Go 4」での確認画面を中心に解説していきます(メーカーが違っても類似の設定項目はあるはずです)。
「DJI Go 4」の画面で表示されている「高度」は、もちろんBさんの考える「高度」です。

「最大飛行高度」の設定

まずは、ドローンの設定画面にある「最大飛行高度」という項目を確認しましょう。
これは離陸地点からの高さの限界値を示す数値です。

この設定により、ドローンを上昇させようとしてもリミッターが効いてそれ以上上昇できなくなります。

<図1:最大飛行高度の設定>

 

日本では「150m未満」という航空法の制約があるため、149mとか、余裕を見て148m、145m、と設定しておくことが多いです。
稀にリセットされて 500m などになっている場合があるので、この設定は離陸前に必ず確認するようにしましょう。

「リターントゥホーム高度」の設定

次に、もう一つ大切な設定は「リターントゥホーム」の設定です。

「リターントゥホーム」とは、そもそもどんな機能なのでしょうか?

 ①一旦ある程度の高度まで上昇
 ②離陸地点まで自動で戻ってくる
 ③自動で着陸する

この①の高度を設定するのが、写真の設定画面です。
これが低すぎると障害物に衝突する可能性がありますし、高すぎるとその分バッテリーも消費しますし時間もかかります。

<図2:リターントゥホーム高度の設定>

 

DJI製品の場合は初期値は大体30mになっていることが多いようですが、これといった正解はありません。

現場の状況により、高度を設定するようにしましょう。

フェイルセーフ

誤作動を起こした時に常に安全側に制御する「フェイルセーフ」についても、必ず設定を確認しておきましょう。
ドローンにおいては、「プロポからの電波が途絶えて制御が効かなくなった時の動作」として使われています。

設定画面で、制御が効かなくなった際にどのような挙動をとらせるのかを指定します。

<図3:フェイルセールの設定>

 

屋外の場合は通常は離着陸地点に戻ってくるという動作「リターントゥホーム」を選びます。
もしここで「ホバリング」を選んでしまうと、プロポを機体の近くに移動させて復活するのを待つしかなくなるからです。
またもし「着陸」を選んだ場合、直下がどんな状況であろうと、仮に湖の上だとしても、着陸してしまいます。

ただし、室内の場合は「着陸」の方が良い場合もあります。
GPSの補足が十分でない室内で「リターントゥホーム」を選んでしまうと、機体の位置を誤認識して誤動作を起こしてしまう可能性があるからです。

機体の特性を理解し、そのときの状況にあわせて、フェールセーフの設定を選ぶようにしましょう。

「スティックのモード」の確認・変更方法

送信機にはスティックモードの違いがありますが、中にはソフトウェア上で変更できるものもあります(ハードウェア的に変更できない仕様のものもあります)

どちらでも使える送信機の場合、他の方が使った後に使う場合は、必ずスティックモードを確認するようにしましょう。

<図4:スティックモードの設定>

 

普段と違うスティックモードのまま操縦しようとすると、事故につながる可能性もあります。
スティックモードの確認・変更方法は必ず把握しておきましょう。

「低電圧警告」の設定

DJI製品の空撮機の場合、バッテリーの残量はパーセント(%)でモニタリングできますが、30%を下回ると警告音が鳴るようになっています。
空撮に夢中になって時間を忘れてしまった時などに便利なのですが、警告音を鳴らす値は変更することができます。

ただ、個人的には30%より小さい値にしないことをお勧めします。
バッテリーはある地点を境に急激に電圧が下がることがあるため、余裕を持って着陸の準備をした方がよいためです。

逆に30%より上回る値を設定したほうがよい場合をご紹介します。

例えば、複数台飛んでいるときに着陸に使う場所が限られていて順番待ちが発生するような場合。(海上でクジラを撮りに行った時に友人が勧めてくれた方法です)

このような場合は、30%よりさらに余裕を持った設定にしておくほうがベターだといえます。

<図5:バッテリーの定電圧アラームの設定>

 

普段はあまり変更することはない箇所ですが、状況に応じて安全に着陸させるための工夫をすると、さらに安心で快適なフライトができることでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のまとめです。

・最高高度の設定が適切か確認しましょう
・リターントゥホーム高度の設定が適切か確認しましょう
・フェイルセーフの設定が適切か確認しましょう
・スティックモードの設定が自分のモードとあっているか確認しましょう
・バッテリーの低電電圧アラームの設定が適切か確認しましょう

チェックすべき項目は他にもありますし、機体によって微妙に異なったりします。

実際の現場では、紙のチェックリストを用意して一つ一つ確認するほうがよいですが、最低限知っておいていただきたい内容を今回は紹介しました。
詳しい方や慣れている方に見てもらいながら、自分なりのチェックリストを作っていくとよいと思います。

9回にわたって連載してきた本シリーズ。

最終回となる次回は「ドローンの『賢い』機能」について紹介していきます。

 

<関連リンク>
コラム#93:フェイルセーフ , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#96:「最高飛行高度」の設定 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#97:「リターントゥホーム高度」の設定 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#95:「高度」の誤解 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#99:「低電圧警告」の設定 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」
コラム#100:「スティックのモード」の変更方法 , Facebookページ「TDR – Takayama Drone Research -」

シェア
前の記事日本初!ドローンビジネスオンラインサロン「ドローン大学院 produced by ドローン大学校」がスタート
次の記事A.L.I. Technologiesがドローン操縦士を100名募集、本日受付スタート!
高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。