公開シンポジウム「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」参加レポート その①

2019年7月4日(木)午後、慶応義塾大学三田キャンパスにて、公開シンポジウムが開催されました。シンポジウムのタイトルは「ドローン前提社会とエアモビリティ社会に向けた未来像」
事務局はドローン・スタートアップに特化したファンドであるDrone Fund(代表 千葉功太郎氏、大前創希氏)、主催はドローン・エアモビリティシンポジウム実行委員会、共催は慶応義塾大学SF研究所ドローン社会共創コンソーシアム

非常に密度の濃い、興味深いお話が聞けたシンポジウムでした。

オープニングセッションで千葉氏が「みんな参加して議論しましょう」と、聞くだけではなく自分の意見を言う・自分はこんなことができる、そんなことをぶつけていきましょう、と繰り返し訴えていた。

尚、当日のタイムスケジュールですが、このように超過密に進行されていきました。

13:00 – 13:05 Opening レポートその①
13:05 – 13:10 Welcome Speech
13:10 – 13:15 Video Message
13:15 – 13:20 Special Speech
13:20 – 13:35 Presentation
13:40 – 14:50 Session1 : 新しい産業・社会の創造
15:00 – 16:15 Session2 : フィールドロボットによる自動化 レポートその②
16:25 – 17:25 Session3 : 次世代モビリティ社会への展望 レポートその③
17:25 – 17:30 Closing
18:10 – 20:00 懇親会

 

それでは、Session1の前に行われた一連のプレゼンテーションから、お伝えしていきます。

オープニング

Session1の前に、合計4名の方がそれぞれのテーマでお話をされました。

 古谷知之氏 慶応義塾大学総合政策学部教授
 今枝宗一郎氏 衆議院議員/ドローン議連PT座長
 米山茂氏 内閣官房 副長官補室 内閣参事官
 千葉功太郎氏 Drone Fund 創業者/代表パートナー

<古谷知之氏> <今枝宗一郎氏>

 

<米山茂氏> <千葉功太郎氏>

 

「Welcome Speech」では慶応義塾大学の古谷氏がプレゼンテーションをされ、「Video Message」では衆議院議員の今枝氏のビデオが流れ、「Special Speech」では内閣官房の米山氏がプレゼンテーションされました。

学者・政治家・官僚の世界で肩書をもつ方々が5分間という短い時間に、それぞれの立場からドローンやエアモビリティ(空飛ぶ車)への期待や課題について、プレゼンテーションされました。
特にエアモビリティについては、政府主導で期限もコミットしている政策だということが改めて認識できました。

最後にDrone Fund の千葉氏が15分間のプレゼンテーションをされました。
課題先進国ドローン前提社会、といったキーワードを織り交ぜながら、会場全体に「議論への参加」を促していました。
ご自身がホンダジェットを購入してエアモビリティ社会の体験を先行して体験されている、それもかなりストイックに訓練も積み重ねられているお話は印象的でした。

Session1 : 新しい産業・社会の創造

Session1では3名の方が、それぞれプレゼンテーションをされたのちにパネルディスカッションの形で進行しました。
以下、お名前と所属です(当日配布されたアジェンダの内容及び並び順)。
モデレータは、千葉氏でした。

 中田誠司氏 大和証券株式会社 代表取締役社長
 高橋誠氏 KDDI株式会社 代表取締役社長 
 藤原弘治氏 株式会社みずほ銀行 取締役頭取
 千葉功太郎氏 Drone Fund 創業者/代表パートナー

注)高橋誠氏の「高」の文字は旧字体(はしご)で記載されていましたが、環境依存文字のためどの環境でも見られるよう「高」(くち)で表記致します、何卒ご了承ください

<パネルディスカッションの様子1> <パネルディスカッションの様子2>

 

議題は大きく2つありました。

 ・スタートアップエコシステムの形成
 ・ドローン前提社会・エアモビリティ社会

スタートアップ企業をどう発掘して育てていくか?
よくある話と言えば、よくある話です。
しかし、証券会社・通信会社・銀行のそれぞれのトップが一同に会している場にも関わらず、いや、だからでしょうか、通り一辺倒の無難な会話で終わらなかったのはすごかったです。

例えば、いかに社員に新しいことに挑戦してもらうかという視点で「働き方改革」に話が及んだ時のことです。
「ウチは副業を原則解禁にする方針」とあるトップがおっしゃいました。
「原則禁止」から「例外的に禁止」とすることで、副業に挑戦しやすくし、その結果外の世界を知る・経験する機会を増やしてもらいたい、という意図のようでした。
それに対して、あるトップが「ウチは副業は原則禁止だ、それなりの覚悟をもってやってもらいたいので、覚悟のある人だけ」と、ご自身の考えを述べられました。

ここで大切なのは、ドローンやエアモビリティの話から逸れて副業の善悪について語られたということではない、という点です。
あくまで、「リスクを取る覚悟」「社会課題の解決にどうコミットするか」といった議論のなかで、どのような手段が考えられて、その手段としてのメリット・デメリットを、”自分事”として捉えての意思の主張だ、ということです。

また、「社会課題の解決」という抽象的な言葉を上滑りで語るだけではなく、「実家の母は、薬をもらうためにバスで40分の道のりを通っている、バスは1日4本しかない」という、具体的なリアルな実体験の話を踏まえながらお話をされていました。

日本を代表する大組織のトップの方々の、「日本をどうにか元気にしたい」「社会課題を解決したい」「そのために挑戦する人を増やしたい」「そういう人を支援するためのリスクマネーを供給したい」といった、一本通った強く熱い想いが言葉の端々に現れていました。

<記念撮影>
左から、千葉氏、中田氏、高橋氏、藤原氏

 

筆者個人の意見

私個人の意見としては、「守るよりも攻める」という企業や個人を増やさないといけないのだろうなぁ、と感じました。
特に上場企業は、四半期決算で短い周期で利益や配当を株主から求められ、どうしても短期の利益を追い求めがちになり気付かないうちに「守り」に入ってしまっていることがあるのではないでしょうか。

「攻め」に入るのは、個人の資質や意思といった要素もありますが、「フォロワーがいるかどうか」という点も重要になります。
周りが精神的に支えてあげる、もし余裕があれば金銭的に支えてあげる、そのような風土をつくるのは、私たち個人個人です。

決して、企業のトップや官僚の仕事だけではありません。
1人1人が議論に参加することが大切、これはオープニングでの千葉氏の言葉でしたが、あの場にいた全員という意味ではなく、社会を構成し同じ社会課題を抱える全員の参加が必要な「全員野球」が必要なのではないかと、改めて思いました。

ここまでのまとめ

ここまでの話のまとめです。

・エアモビリティは政府もコミットしている政策である
・ドローンやエアモビリティは、社会課題を解決するために使われるものである
・挑戦する人・能力ある人材を育てていくことが急務である
・スタートアップ企業を支援するためのリスクマネーの確保が急務である

このレポートであの場の空気を伝えきれないほどの面白さがありましたが、その一端だけでもお伝えできれば幸いです。

次回は、Session2以降の様子をお伝えいたします。

<関連リンク>
Drone Fund リリース文
空飛ぶクルマ”の実現に向けたロードマップ , 経済産業省
日本初のドローンスタートアップに特化した専門ファンド「ドローンファンド」設立(2017年6月) , DRONE MEDIA
Drone Fund ジェネラルパートナー千葉功太郎氏インタビュー(2017年6月) , DRONE MEDIA
ドローンファンド総額16億円でファイナルクローズ(2018年2月) , DRONE MEDIA
「空の移動革命に向けた官民協議会」第一回会合が開催される(2018年8月) , DRONE MEDIA
ドローン・エアモビリティ特化型ファンド 「Drone Fund 2号」 が世界最大規模の52億円を調達(2019年5月) , DRONE MEDIA

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高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。