センシンロボティクス、ドローンを活用した陸域生態系調査の実証実験を実施

ドローンなどのロボティクス技術と先進技術を組み合わせた業務用ソリューション事業を展開するセンシンロボティクス(本社:東京都渋谷区、以下「同社」)は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC、以下「JAMSTEC」)の実施する植生調査において、同社の完全自動運用型ドローンシステム「SENSYIN DRONE HUB」を用いたドローンによる全自動陸域生態系調査の実証実験を実施しました。

日本最古の貝塚における植生調査に「SENSYN DRONE HUB」を活用

今回の実験場となったのは、神奈川県横須賀市の最北端に位置する夏島(なつしま)貝塚。東京湾にせり出す半島に位置し、目の前を海に、さらに周囲を自動車メーカーや重工メーカー等の工業施設に囲まれていますが、実は日本で最も古い縄文時代早期の貝塚として知られています。出土した土器群が「夏島式土器」と称された標式遺跡(※1)であり、国の指定重要文化財にもなっています。夏島式の名前を教科書等でご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
夏島はかつて横須賀湾に浮かぶ小島でしたが、大正時代に埋め立てられた結果、三浦半島と陸続きになりました。昭和47年(1972年)に国が史跡(※2)に指定。現在は保全のため周囲がフェンスで囲われ、人が立ち入ることはできません。
ちなみにJAMSTEC本部は、この夏島貝塚の裏山に位置しています。

同社は今回、この夏島貝塚を対象に、植物季節に着目した樹種判別を実施する目的で、「SENSYN DRONE HUB」を用い上空からの植生調査を行いました。

夏島貝塚のオルソモザイク画像(JAMSTEC提供)

※1 標式遺跡:考古学で、一つの型式を的確に示すことのできる典型的な遺跡のこと。
※2 史跡:貝塚、集落跡、城跡、古墳などの遺跡のうち、歴史・学術上価値の高さにかんがみ、保護が必要な旨を国や自治体によって指定されたもの。
※3 上空から撮影した写真の像の位置ずれをなくし、地図のように真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換された画像をオルソ画像といい、これらをつなぎ目が目立たないよう接合(モザイク)し、統合したものをさします。

全自動運用型ドローンシステム、生態系調査においてもその有効性を証明

今回の実証実験では、植生調査のための画像データをドローンで取得することを目的とし、下記の検証を行いました。

  • ルート設定した上空をドローンが自動飛行し、画像データを取得できるかの確認
  • スケジューリング登録したドローンが設定時間に自動航行し、画像データが取得できるかの確認

定刻になるとドローンが「SENSYN DRONE HUB」から自動的に離陸し、下記写真のようなあらかじめ設定されたルートに沿って正確に飛行した後、自動的に基地に戻り完全自動で着陸できることが確認されました。

ルート設定画面
航行ルートを自動算出

このような植生調査に有人航空機(ヘリコプターやセスナ機等)を利用する場合もありますが、ドローンの活用することでコストが削減できること、また有人航空機よりも低空で空撮できることがメリットとして挙げられるでしょう。また有人航空機に比べ離発着の際のスペースを取らないので、今回の夏島貝塚のような人口密集地域(※4)でも飛行が容易であることもポイントかと考えます。

※4 当地は人口密集地域に該当し、無許可でのドローン飛行が禁止されているエリア内であったため、国土交通省の許可を得て飛行を行いました。また当実証実験は横須賀市教育委員会(文化庁)の許可を得て実施しています。

ドローン業務運用の簡素化・完全無人化をめざして

2015年10月に設立された同社は、『ロボティクスの力で、社会の「当たり前」を進化させていく。』というビジョンを掲げるテックベンチャーです。社会課題が存在し、自動化・汎用化のしやすい分野として「設備点検」「災害対策」「警備・監視」等を注力領域に据え、これらにおいてドローンを核とした各種ソリューションサービスを展開することにより、日本の社会課題を本質的に解決することを目指しています。
同社は「SENSYN DRONE HUB」を「ドローンを活用した業務の完全自動化を実現する存在」と位置づけ、あらゆるパートナリングを通じ、無人化に向けた技術・ビジネス検証を試みてきました。それらパートナーの中には、これまで報道されただけでも慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)やゼネコンのフジタ住友商事の物流施設「SOSiLA」等、あらゆるプレイヤーが含まれています。
同社は今後も、完全自動運用の実現を目指し、効果測定・実証実験を継続する考えです。