ドローンなどのロボティクス技術と先進技術を組み合わせた業務用ソリューション事業を展開するセンシンロボティクス(本社:東京都渋谷区、以下「同社」)は、住友商事の物流施設「SOSiLA」の川越拠点において、警備監視・巡視点検の自動化にあたり、同社が開発した全自動運用ドローンシステム「SENSYN DRONE HUB」の有効性が確認できたと発表しました。
全自動運用型ドローンシステム、物流施設においてその有効性を証明
「SENSYN DRONE HUB」は、ドローンの機体、基地(ドローンを格納し、自動離発着や自動重電にも対応する自動開閉型のステーション)、制御ソフトウェアや業務アプリケーションが一体となった統合ソリューションで、あらかじめ設定されたルートへの自動飛行、画像・映像の撮影が可能です。
今回の実験は、住友商事が2019年1月に川越にオープンした最新鋭物流施設「SOSiLA川越」で行われ、実施にあたってはおもに下記の点に重点が置かれました。
- 自動離陸・着陸の検証
今回の実験では、定刻になるとドローンが「SENSYN DRONE HUB」から自動的に離陸し、下記写真のようなあらかじめ設定されたルートに沿って正確に飛行した後、自動的に基地に戻り完全自動で着陸できることが確認されました。
- 映像伝送システムの検証
実際の警備監視業務を想定し、SOSiLA川越と遠隔地の警備拠点とを無線映像伝送システムで中継、映像品質の検証を行いました。
また警備拠点からのカメラ操作や自動航行の一時停止/再開が正しく行えるかもあわせ検証した結果、警備業務における一時スクリーニングを行う上では問題ないとの結果を得ました。
- 夜間飛行の検証
実際の警備業務を想定し、夜間帯における実験も実施。その結果、「SENSYN DRONE HUB」から飛行したドローンが設備の状況を問題なく捉え、夜間でも精細な映像を撮影できることが確認できました。
夜間の無人警備ではカメラの画質が大きなカギを握りますが、同社のドローンが撮影した写真を見ると、赤丸の中に敷地内を歩く人の姿が鮮明に映っているのが分かります。
- 屋根・壁面点検の検証
建物の定期巡視業務を想定し、屋根や壁面の汚れ、雨どいの詰まりが確認できるかの検証を行いました。こうした状況を放置することは、建物の美観を損ねるばかりでなく、結果的に外壁の塗装や壁材を痛めたり、基礎内に雨水が侵入することで高湿化を招いたりする原因となります。
同社ドローンが撮影した画像を拡大して見たところ、壁の汚れ・雨どいのつまりまで確認することができました。また「SENSYN DRONE HUB」のスケジューリング/データリンク機能により、定刻になるとドローンが自動航行することも確認でき、定期巡視業務にも問題なく応用可能であるとの結果を得ることができました。
ドローンによる作業自動化を通じ「あらゆる作業を自動化できるサービス」の実現を目指す
2015年10月に設立された同社は、『ロボティクスの力で、社会の「当たり前」を進化させていく。』というビジョンを掲げるテックベンチャーです。社会課題が存在し、自動化・汎用化のしやすい分野として「設備点検」「災害対策」「警備・監視」等を注力領域に据え、これらにおいてドローンを核とした各種ソリューションサービスを展開することにより、日本の社会課題を本質的に解決することを目指しています。
同社は「SENSYN DRONE HUB」を、「ドローンを活用した業務の完全自動化を実現する存在」と位置づけ、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に常設して各種デモンストレーションやテスト飛行を重ねたり、ゼネコンであるフジタと工事現場におけるドローン警備の有効性の検証を行ったりしてきました。
同社が目指すのは、「ドローンの業務運用の簡素化・完全無人化」。これまで高い専門性が必要とされていたドローンの業務運用を簡易化し、あらゆる作業を自動化できるサービスを実現すべく、多種多様な業種のプレイヤーと積極的に共同実験を行っています。
物流業務における警備人材不足の救世主となるか?ドローン警備に期待集まる
昨今は物流業務における倉庫業の役割が非常に重みを増しています。特に、Eコマースの一般消費者への普及により、小口・多頻度の輸送ニーズが高まったことも大きな要因です。
一方で、物流施設がテロの標的になる可能性や、万が一そうなった場合の被害の大きさに照らし、国土交通省は倉庫等の物流施設に対して自主点検の実施を定期的に要請しています。しかしながら、警備人材という切り口からこれを考えた場合、人手不足が慢性化・深刻化しているため、物流・倉庫業における警備・点検業務の省人化ニーズは非常に大きいものと想定されています。
ドローンを活用した警備業務は、そうした点を解消し得るものとして大きな期待が集まる領域です。人間の目視警備では死角になってしまう場所や物陰もまんべんなく捉えることができる「監視範囲の広さ」や、危険な場所へ人間が赴く必要がないという「安全性」も兼ね備えており、大手警備事業者も研究開発を進めています。
同社は、今回のSOSiLA川越での「SENSYN DRONE HUB」実験結果も踏まえつつ、ドローンによる点検・警備業務の完全自動運用に向けて、今後も効果測定・実証実験を継続していく考えです。