ドローンのビジネス利用は日進月歩です。2015年12月の改正航空法の施行により商業利用のルールが明確になり、2016年には飛行場や教室といった周辺サービスが充実してきたことで、ドローンは限られた人だけが使うアイテムではなく誰もが使えるアイテムへと変化を遂げました。
その結果、ドローンを使ったビジネスチャンスを探る動きも活発化していますが、まったく新しい技術であるがゆえに、期待にどれだけ応えてくれるのか、世の中がどう変るのかを予測するのは難しいことも確かです。
そんな中、2月16日に渋谷で開催されたビジネスセミナーには、ドローンを使った新規ビジネスのヒントや、ドローンの具体的な活用方法のヒントを得ようと、定員を上回る30名近い方が集まりました。セミナーの講師は、中小企業診断士として100社を超える創業支援やドローンメディアの運営に携わってきた関口大介氏。ドローン活用が期待される主な分野を概観する資料のページ数はなんと108ページにも及びました。
このレポートでは、セミナーの内容を元に「ドローンビジネスが解決する課題は何か?」という観点で、ドローンビジネスの状況と見通しを紹介してみたいとおもいます。
日本の課題を解決する土木や農業の分野に大きな市場あり
日本は少子化と高齢化が進み、労働力の不足が大きな社会問題になっています。そして、高度成長に作られた橋梁やトンネルといった社会インフラも同じように老朽化(高齢化)が進んでいます。このような公共性の高い分野での救世主になりうるものとしてドローンは期待されています。
その中でも特に規模の大きいのは土木です。国土交通省や地方公共団体が発注元となる土木工事の市場は20兆円で、工事前の測量だけでなく、進捗管理や出来形管理といった幅広い工程でドローンの活躍が期待できそうです。国土交通省が、規模の大きい工事においてはICTの利用を前提にしていこうというi-constructionの方針を示していることもあり、「2016年はICT土木の利用を410件予定していたが、すでに大幅に超過し1,000件を超えている。しかし、公共工事そのものは20万件あり、まだまだ伸びしろは大きい」と関口氏は語りました。
ただ、積算基準といった単価基準もあり、付加価値をつけた差別化によって大きな利益を出すことは難しいだろうということ。セミナーのでは、現状の測量会社は規模が小ささがデータで紹介されていました。
この分野では、東南アジア市場で急成長を遂げている電動バイクメーカーのテラモーターズがテラドローンを設立し、資金力とグローバル展開のノウハウを活かして事業を急拡大しています。
また、橋梁やダム、送電線と言った社会インフラのメンテナンスも大きな市場が見込める分野です。しかし、近接点検ということで作業員が自分自身で点検をするというルールが定められているため、今すぐ広がるということはなさそうです。しかし、「労働力不足や高所作業による点検のコストの高止まりといった課題があるため、国の方針が変わって一気にドローンが活用されていく可能性もある」とのことでした。
農業のドローンは発展途上。具体的な課題に取り組むベンチャーにチャンスあり
農業の分野では、「農薬散布」「精密農業」という2つの分野でドローン利用が期待されています。しかし、「農薬散布」は農水協(農林水産航空協会)の規制があり、安全性等を考えるとビジネスとしての新規参入のハードルは高そうです。
一方、スマートアグリとも呼ばれる「精密農業」の分野ではオランダではハウス栽培の効率化、アメリカでは広大な農地での生産の効率化などで一定の成果を上げているとのことで、日本の農業が抱えている課題を解決するようなドローンの使い方には可能性がありそうです。
この分野での新規参入の事例としては、北海道を舞台にドローンを活用したお米作りに挑戦しているドローン・ジャパン株式会社があります。ドローンのソフトウェア「ドローンコード」の教育事業も展開していることが、同社の強みとなっています。
農業、林業、水産業といった第1次産業の分野においては、事業を営んでいるパートナーと課題解決に取り組むことで、新規参入の可能性が期待できそうです。その地域の環境や栽培する農作物の特性に応じた様々なドローンの活用方法があると思います。
ということで、前編は公共性の高い課題にフォーカスしてみました。後編では、既存企業の課題や個人の課題にフォーカスしてみたいと思います。