編集部注:本稿は台湾を中心に東南アジアで活躍する川ノ上和文氏が運営する情報サイト「CONNECT Let’s xyZing!!」からの転載記事。日本語では情報の少ない深圳のドローン事情について記載があったので、同氏に許可をいただき、こちらに掲載させてもらっております。
深圳(シンセン)。ドローンにかかわっている方ならもちろん、製造業関連の方々はこの街の名前を聞いたことがあるかと思います。
高城剛さんの本の中ではチャイニーズシリコンバレー、また日経新聞では過去に”ドローンの都”、と紹介されていた中国南部の街です。
ドローンを世に広めたDJI、CES(Consumer Electronics Show)人を乗せれる機体を発表したEHANG、ホビーで初心者に人気のHUBSANなど日本でも名が知れた中国ドローンメーカーの本拠地はすべて深圳 で、日本で知られていない新興ホビードローンメーカーはもちろん産業用メーカーも多く深圳にあり、名実ともにドローンの都となっている街です。
さて、そんなドローンシティーの深圳ですが、深圳宝安国際空港に降り立つとまず目に付くのがアップルを意識したようなスタイリッシュなデザインの DJIショップです。イタリアの建築家がデザインしたマンタをイメージした近代的、開放的な空港と見事にマッチして、存在感を示しています。
DJIショップは深圳市内の商業施設内にも数箇所あり、価格帯の低いホビードローンであれば露天商や小さなおもちゃ屋でも気軽に手に入ります。特に 秋葉原の規模をはるかに超える電脳エリアである華強北という場所では、ネオン輝くビルを背景にドローン販売員の若者が華麗な操縦を披露しています。普通に人が歩いている上も飛ばしていて、日本ではありえない光景が広がっています。
そんな中国でのドローン規制は2013年11月に発表された<民用無人駕駛航空器系統駕駛員管理暫行規定>、そしてそれを補完する目的で2016年に発表された<軽小型無人機運行適行規定>という法律で管理されています。
これらは主に業務レベルの中大型機を規制する内容で、重量別に機体カテゴリーが分類され、高度規制、飛行可能な区域指定などが定められていますが、飛行総重量1.5KG未満はホビーレベルとみなされ、規制対象とはなりません。ホビーレベルの場合は危険区域、政府施設付近以外で人の安全が確保できる場所であれば基本的に自己管理となっています。
(華強北は人通りが多いので、安全確保の観点からはホビー用とはいえ厳密には違法ということになるようです。)
飛行総重量1.5-7KG(本体重量4KG以下)の機体での業務利用の場合、飛行日の1週間前を目処に飛行計画、機体情報、操縦者情報等の申請が必要になります。
7KG以上になると、前述の申請の他に中国航空器所有者及び操縦者協会(AOPA中国)が認定する操縦免許が必要となります。
ファントム4はバッテリー込みで1.38Gなので免許・申請も不要で飛ばすことができ、インスパイアは2.935Gですので、業務利用でなければ免許・申請不要、業務利用では飛行計画等の提出は必要ということになります。
中国では農業でのドローン活用に対して政府から補助金が出るなど中大型機の産業利用での普及が進んでおり、操縦者需要は10万人といわれています。前述のAOPAの発表によると2015年末の時点でライセンス取得者は2142名となっており、操縦者養成需要はまだまだ伸びています。現在AOPA認定の養成機関は全国57校で認可待ちが380校ほどあるようです。
土地が広い中国では練習場の確保も比較的容易で、レース、空撮のコミュニティも各地に存在しており、FPVを含むドローンレースも積極的に行われています。6月末には深圳で先日日本、中国(深圳)、韓国のレース主催団体が理事となり設立されたアジアドローンレース協会(ADRO)主催のレースが開催されます。(私も視察予定ですのでレポートは乞うご期待!)
ドローンを含む航空産業関連の展示会やシンポジウムは北京、上海、深圳など主要都市を中心に全国で開催されており、産業成長の勢いを感じます。
(6月27~30日に深圳で開催される航空シンポジウムには私も参加予定ですのでこちらのレポートもご期待ください!)
深圳という街の成長スピードはとても速く、ドローン産業はもちろん今の中国を率いる重要な拠点になっています。
ここには定期的に足を運ぶだけの価値があるパワーがあり、是非皆さんにも訪れていただきたい場所です。
機会をみて深圳視察ツアー等も企画できればと思っておりますので、ご興味おありの方はご連絡いただければ幸いです。