ドローンを自律型ロボットに進化させる搭載型スーパーコンピューター「DJI MANIFOLD 2」を発表

DJIが、次世代の自律型空撮ロボットソリューションを可能にする、DJIドローン専用の超小型搭載型コンピューター「MANIFOLD 2」を発表しました。DJI Japan の発表によると「自律型ロボット」「スーパーコンピューター」「次世代の産業用ドローンソリューション」と期待の高まる言葉が並んでいる本プロダクト。しかしながら、専門的な用語が多く、難解な内容と感じた方が多かったのが正直なところではないでしょうか。

そこで本記事では、「MANIFOLD 2」を少しでもわかりやすく解説することを試み、この製品により世の中の何が変わっていくのか、考察をしてみたいと思います。

 

要するに一言でいうと何なのか?

DJIの発表によると、「MANIFOLD 2」は下記のような外観をしています。

<図1:製品画像の写真>

 

これをみただけでこの製品が何をするのもなのかが理解できる方は、かなり少数派ではないでしょうか。ただ、サービスではなくプロダクト(製品)なんだな、ということは想像できます。

プロダクトということは、製品説明書があるはずです。そこで「Mailfold 2」の製品紹介HPに行ってみると、他のDJI社の製品同様「ダウンロード」というタブに製品マニュアルがあります。

Manifold 2 製品情報 v1.0(PDF)

PDFの9ページ目と10ページ目に、幸いにも日本語の記述があり、「Mainfold2は、DJI SDK開発者向けのDJIの第2世代マイクロコンピュータです。」と記載されています。

要するに一言でいうと「開発者向けのドローン用の小型コンピュータ」ということですね。

 

何がすごいのか?

比較対象がなければ、製品のすごさがわかりません。今回は「Mailfold2」と「2」であることから「1」があるということです。

「1」については、「Mailfold」の製品紹介HPに載っています。

<図2:Mainfold>※製品HPより

 

「VIDEO」というタブがあり、チュートリアル動画をみることができます。2017年4月の動画なので、今から2年以上前のものです。

「1」と「2」の詳細なスペック比較は割愛しますが、サイズは小さくなった一方で、消費電力は上がったようです。「1」では15Wでしたが、「2」になると25W(Manifold 2-G)から60W(Manifold 2-C)に上がっていました。

新製品なのに省エネになっていないのはなぜでしょうか?それは、今回の新製品は画像処理能力が高いコンピュータだからだと思われます。みなさんもスマートフォンで3Dゲームをしているとバッテリー消費が大きいという経験をしたことはありませんでしょうか?画像処理というのは多くの電力を使うものだと思えば、仕方がないといえば仕方ありません。

また、「2」には2つの製品があるようです。GPC(Graphics Processing Unit)をベースとした「Manifold 2-G」、CPU(Central Processing Unit)をベースとした「Manifold 2-C」です。

どの製品に関係があるのか?

対応する機体は、「Matrice 600 Pro」「Matrice 210 シリーズ」「Matrice 210 RTKシリーズ」のようです。フライトコントローラー「N3」「A3」にも対応しているようです。

要するにPhantomやMavicといった一般ユーザ向けドローンではなく、産業用ドローンのために作られたものだ、ということになるでしょう。また、空を飛ぶドローンだけでなく、ロボット工学の分野まで広く応用されることを狙っているようです(FAQの2番目の質問に対する回答の中にも書かれています)。

開発者向けという点は「1」と変わりませんが、「2」になって開発者の中でも裾野を広げようというのが今回の製品のようです。

 

どこでいくらで買えるのか?

プレスリリースによれば、リリースのあった2019年5月29日当日から、すでに販売開始しているようです。購入できるのは、全国のDJI Enterprise正規代理店とのことです。DJI STORE には購入ボタンがあるものの、「お客様のお住まいの国/地域ではご購入いただけません。」と出てきてしまいます。開発者向けですので、代理店を通して購入するのがよいのかもしれません。

社会にどんな影響があるのか?

開発者向けの製品とはいえ、産業用ドローンやロボット分野全体を想定しているということは、社会への影響も気になるところです。画像処理に優れたコンピュータですから、より高機能な製品が出てくることでしょう。

わたくし個人の意見としては、関わるエンジニアに求められるスキルが、これまでとは変わってくるのではないかと考えています。特に、ITエンジニアの活躍の場が広がるのではないかと思いました。これまではどちらかというとハードウェア中心に開発が進んできたのではないかと想像しています。それが、ソフトウェアが重要になり、ネットワークの知識も必要になり、画像処理やAI(人工知能)の分野までもがかかわってくる・・・。「空飛ぶラジコン」ではなく「空飛ぶロボット」になってきているのは明らかですが、更に加速していくのではないか、と考えています。

筆者は以前、「次世代ドローンを支えるソフトウェア技術」のセミナー参加レポート(前編後編)を書きましたが、そのセミナーではソフトウェアエンジニアにとっては「引く手あまたの業界」であり「これまでのスキルを十二分に発揮できる業界」という結論でした。

今回の製品も、その流れの中で、関わるエンジニアの数と質を変えていくような気がしました。つまり、エンジニアの雇用環境が変わっていくはずだ、ということですね。

新製品発売となると、製品市場の環境変化ばかりが気になりますが、今回は労働市場の環境変化にもつながってきそうです。エンジニアにとっては明るい未来であると考えてよいのではないかと思います。

まとめ

今回の「Mainfold2」についてのまとめです。

・DJIより開発者向けの小型コンピュータが発売された
・空飛ぶロボットだけでなく、ロボット全体に使われる可能性のある製品である
・開発者(エンジニア)に求められるスキルが変わってくる

一般ユーザーへの影響がわかりにくい製品のリリースでしたが、この製品のリリースがきっかけで、数年後に世の中がガラっと変わることが、あるかもしれません。

今回もDJI製品のなかで動くクローズドな製品でした。個人的には「Mailfold 2」により空飛ぶロボットの産業が大きくなることも期待したいですが、これに対抗するオープンな製品の興隆も同時に期待したいです。

なぜなら、そのほうが「iOS vs Android」のような競争が起き、産業全体として大きくなっていくと思うからです。

<参考URL>
ドローンを自律型ロボットに進化させる搭載型スーパーコンピューター「DJI MANIFOLD 2」を発表 , PR TIMES
Mainfold , DJI
Mailfold2 , DJI
「次世代ドローンを支えるソフトウェア技術」セミナー参加レポート(前編) , DRONE MEDIA
「次世代ドローンを支えるソフトウェア技術」セミナー参加レポート(後編) , DRONE MEDIA

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Takayama
高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。