ドローン初心者にオススメの書籍5選 ~アカデミック編~

ドローンを始めたい、ドローンをもっと知りたい、けれども「どんな書籍を読んだらいいかわからない!」という声を時々聞きます。 ネットでは判断しきれないので本屋さんに行くという方もいらっしゃるかと思いますが、どのコーナーにおいてあるのかもわからないし、店員さんに聞いてもわからないことが多い、というのが現状ではないでしょうか。

この記事ではそんなドローン初心者の方々にオススメの書籍を、筆者の経験を基にピックアップしており、前々回は「ビジネス編」を、前回は「エンジニア編」をお届けました。

昨今は技術開発も進み、大学や大学院でレポートや論文のテーマとしてドローンを扱ってみたい、という学生や、働きながらスキルアップを目指す社会人学生も多いのではないかと思います。

そこで今回は「アカデミック」という視点から5冊の書籍を紹介します。
筆者は数年前に社会人大学院に通っていたこともあり、仕事をしながらレポートや資料を探す時間を確保することの難しさは共感できるつもりです。
そんな忙しい社会人大学生の方々にも少しでもお役に立てる情報になれば、大変幸いです。

ドローンの「研究」をするのに最適な書籍

前回・前々回同様、今回も5冊の本を紹介していきます。
それぞれの書籍の著者はどういった視点でどういったことを伝えたいのか、そういった意図を尊重しつつレビューしていきたいと思います。

まずは本記事で紹介しているオススメ書籍の概要をかいつまんで紹介します。

1冊目:産業用ドローンの開発の中身が体系的に書かれている良書

タイトル ドローン産業応用のすべて ー開発の基礎から活用の実際までー
発行所 株式会社 オーム社
著者 野波 健蔵
紹介

産業用ドローンの技術について踏み込んだ内容の書籍は少ないですが、この本は技術や活用事例の紹介が網羅的に書かれています。
序章から5章まであり、前半はドローンの技術について、後半はドローンの活用と未来について紹介されています。
読破すれば産業用ドローンにかなり詳しくなれるはず!

オススメポイント

網羅的に産業用ドローン開発の全体像を知ることができる点。
理工系の学生に特にオススメ。

 

2冊目:ドローンの全貌を捉えつつ詳細な解説まで踏み込んだ一冊

タイトル ドローンメカニズムの基礎知識
発行所 日刊工業新聞社
著者 一般社団法人 日本UAS産業振興協議会
紹介

エンジニア編でご紹介した「トコトンやさしいドローンの本」(日刊工業新聞)の続編です。
ドローンの関連する分野は広く、その全貌を理解するのは困難です。
この本では図を多用し、見開き1ページで1テーマ完結というような読みやすい工夫もされており、1冊でドローンの世界の全貌を理解したい方にオススメです。

オススメポイント

図も多く、見開き1ページで1テーマが完結して読みやすい。
入門書の内容では物足りない文系・理系の学生・研究者にオススメ。

 

3冊目:航空の歴史をまとめて俯瞰できる本

タイトル 落ちない飛行機への挑戦 航空事故ゼロの未来へ
発行所 株式会社 化学同人
著者 鈴木 真二
紹介

人を乗せずに飛ぶドローンの安全は、人を乗せて飛ぶ飛行機の歴史から学ぶことが沢山あるはずです。
高い安全性と信頼性を要求される飛行機、それを生み出すためにどのような苦労や工夫があったのか、この本で学ぶことができます。

オススメポイント

飛行機の誕生から最新の開発まで歴史を俯瞰できる。
文系・理系どちらの学生・研究者にもオススメ。

 

4冊目:ドローンの安全・事故防止という観点で役立つ本

タイトル ドローンが拓く未来の空 飛行のしくみを知り安全に利用する
発行所 株式会社 化学同人
著者 鈴木 真二
紹介

今まで飛行機が飛べなかった低高度を飛行するドローンは、「空の産業革命」とまで呼ばれています。
しかし、落下の危険や航空機とのニアミスなどが懸念されている中、ドローンの安全な利用が求められています。
先に紹介した「落ちない飛行機への挑戦」と合わせて読むと、ドローンの安全について深く理解していけるはずです。

オススメポイント

ドローンの安全・事故防止について航空機と合わせて解説している点。
文系・理系どちらの学生・研究者にもオススメ。

 

5冊目:写真測量という専門分野で長く使われてきたベストセラー

タイトル 解析写真測量 改訂版
発行所 一般社団法人 日本写真測量学会
責任者 近津 博文
紹介

写真や映像を使って三次元空間の計測を行うSfMやSLAMといった最新技術の進歩は目を見張るものがあります。
それらの最新技術は写真測量の原理が応用されており、原理を知るとさらに理解が深まります。
写真を使った計測の原理原則が書かれた書籍を探している方は、その分野でベストセラーとして親しまれている本書を手に取ってみることをオススメします。

オススメポイント 写真測量という専門分野におけるベストセラー。
理工系の学生・研究者に特にオススメ。

 

それでは、各書籍の特色とオススメポイントをじっくり見ていきましょう。

 

1.ドローンの六法全書的存在 『ドローン産業応用のすべて ー開発の基礎から活用の実際までー

タイトル:『ドローン産業応用のすべて ー開発の基礎から活用の実際までー
発行所 :株式会社 オーム社
編著者 :野波 健蔵

<図1-1:書籍の表表紙> <図1-2:書籍の裏表紙> <図1-3:書籍の奥付>

 

最初にご紹介したいのが、千葉大学名誉教授で、昨年上場したことで有名な 株式会社自律制御システム研究所(ACSL)の創業者 取締役 会長でもある、野波健蔵先生の著書です。

ドローンの要素・技術がひとつひとつに丁寧に、そして詳しく解説がされています。
数式も多くでてきますが、工学系の学生にとっては難はないと思います。
特に「1章 ドローンの歴史と要素技術・飛行制御」「2章 ドローンの自律制御技術」は、専門外の部分はかなり難しいですが、読みごたえがある内容になっています。

工学系の学生でない方には、「3章 ドローンの利活用最前線」の章がオススメです。
産業分野別にドローンの活用事例が詳しく書かれています。

産業用ドローンについて調べたい・学びたい方にとって、まずは手元に置いておくべき一冊と言えるでしょう。

 

2.きちんと知りたいならこの一冊! 『ドローンメカニズムの基礎知識

タイトル:『ドローンメカニズムの基礎知識
発行所 :日刊工業新聞社
監修者 :鈴木 真二
著者  :一般社団法人 日本UAS産業振興協議会

<図2-1:書籍の表表紙> <図2-2:書籍の裏表紙> <図2-3:書籍の奥付>

 

次に紹介したいのが、「エンジニア編」でご紹介したトコトンやさしいドローンの本』の続編にあたる本です。
一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が編集し、東京大学の教授でいらっしゃる鈴木真二先生の監修です。

見開きで1テーマ完結しており、イラストも多く、『トコトンやさしいドローンの本』のわかりやすさはそのままに、内容はさらに詳しい充実っぷり

特に「第3章 ドローンのメカニズム<上級編>」は、個人的には「それが知りたかった!」というものが多く、これも必読の一冊といえます。

また、起業を考えている学生には「第6章 ドローンを仕事にするには」という章もオススメです。

 

3.航空の事故防止の歴史を学ぶならこの一冊! 『落ちない飛行機への挑戦 航空事故ゼロの未来へ

タイトル:『落ちない飛行機への挑戦 航空事故ゼロの未来へ
発行所 :株式会社 化学同人
著者  :鈴木 真二

<図3-1:書籍の表表紙> <図3-2:書籍の裏表紙> <図3-3:書籍の奥付>

 

空を飛ぶ物は落下リスクが避けられないため、安全管理が大切になります。
その安全管理を、飛行機誕生の歴史から紐解いたのがこの本になります。

著者は、東京大学の教授でいらっしゃる鈴木真二先生。
前半の約200ページはすべて歴史から学ぶ話ばかりで、最後は最新研究成果についても書かれています。

「賢者は歴史から学ぶ」という言葉がありますが、飛行機の安全の歴史からドローンの安全管理を学ぶと、その知見には深みが増すと思います。

かなり読みごたえのある1冊ですが、歴史の部分は読み物としても楽しめますし、参考文献の数が多いのも助かります。
理系・文系のどちらの学生にもオススメです。

 

4.ドローンの安全を学ぶならこの一冊! 『ドローンが拓く未来の空 飛行のしくみを知り安全に利用する

タイトル:『ドローンが拓く未来の空 飛行のしくみを知り安全に利用する
発行所 :株式会社 化学同人
著者  :鈴木 真二

<図4-1:書籍の表表紙> <図4-2:書籍の裏表紙> <図4-3:書籍の奥付>

 

さきほどは人が乗る航空機の安全についての書籍を紹介しましたが、こちらはドローンの安全についての本です。

著者は、同じく東京大学の教授でいらっしゃる鈴木真二先生。

ドローンの歴史や原理の話ももちろん書いてありますが、「安全」という切り口を重視して書かれているのが特徴と言えます。
「第6章 ドローンの事故防止をめざして」は、かなり体系的にまとめられています。

空を飛ぶ移動体が、有人の場合と、無人の場合とで、どのように安全を確保していけばよいのかを知るためには、先に紹介した本と合わせて2冊で学ぶことができるのではないでしょうか。

 

5.写真測量を深堀りするならこの一冊! 『解析写真測量 改訂版

タイトル:『解析写真測量 改訂版
発行所 :一般社団法人 日本写真測量学会
責任者 :近津 博文

<図5-1:書籍の表表紙> <図5-2:書籍の裏表紙> <図5-3:書籍の奥付>

 

最後に紹介するのは、かなりコアなものですが、写真測量という分野ではロングセラーとなり、その分野では知らない人はいないほどの良書です。

私も最初の大学院生のときに、研究室に置いてあったこの本(当時は改訂版ではなかったですが)を片手に、ステレオマッチング(2枚の画像の中から特徴となる点を見つけて位置関係を導き出す)の数式をプログラム(C++)に落とし込む作業をしていました。
三角関数と行列がたくさん出てきて、理解するのに一苦労でしたが、「これが理解できたら、写真測量の原理がわかるようになり、応用がきくようになる」と信じて、バイブルとして重宝しました。

日本写真測量学会の初めての自費出版本ということで、由緒ある書籍でもあります。

建設・測量業界においては、UAV(ドローン)写真測量が浸透してきている中、写真測量について深く知るためのバイブルとして、お手元に一冊あるとよいかと思います。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。
ご自身にあった書籍を選ぶヒントになれば、幸いです。

オススメの書籍シリーズは今回で一旦筆を置きますが、今後はさらに多くの書籍が出てくることと思います。
また機会があれば、紹介していきたいと思います。

<関連リンク>
ドローン初心者にオススメの書籍5選 〜ビジネス編〜
ドローン初心者にオススメの書籍5選 〜エンジニア編〜

 

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高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。