DJI AGRAS MG-1を使ったドローン編隊飛行による農薬散布公開デモ 参加レポート

先日の6月25日に茨城県の龍ケ崎市でドローンによる農薬散布の公開デモが行われました。

デモの内容は、DJI JAPANの農業ドローン「AGRAS MG-1」とシンジェンタ ジャパンの水稲用除草剤 「アクシズ® MX 1kg粒剤」を用いて、自動航行による農薬散布実証試験を公開実施するというもの。

農薬散布用のドローンは2台同時自動飛行を行い、地図情報の鮮度を保つ為にドローンを使って事前に圃場の測量を行うなど、産業用ドローンに興味のある方には見逃せないものばかりでした。

また、使用された農薬も「自己拡散型」という新製品であり、ドローンのイノベーションと農薬のイノベーション、それらを掛け合わせた農業の生産性向上と、未来感溢れる内容でした。

会場の様子

今回のイベントデモは「横田農場 ライスセンター」の圃場で実施。JR佐貫駅からバスで1時間弱の場所にあり、自動田植え機により稲が植えられた圃場でした。参加者は、ドローン関係者だけではなく、農業関係の方々も多く、2台のバスを使ってのフィールドツアーでした。

<図1:会場の様子①> <図2:会場の様子②> <図3:圃場の様子>

 

また会場にはそれぞれの会社の代表も来られていました。
機体メーカーのDJI JAPAN、農薬メーカーのシンジェンタジャパン、ユーザーの横田農場、という3社の取り組みという形でした。

<図4:DJI JAPAN
代表取締役
呉 韜氏>
<図5:横田農場
代表
横田 修一氏>
<図6:シンジェンタジャパン
代表取締役社長
的場 稔氏>

 

農薬の説明

シンジェンタジャパン 甘利氏が、ノビエと呼ばれる雑草の害について解説し、たった1本でも大きな被害をもたらすことを説明しました。

今回のデモでは「アクシズMX 1kg粒剤」という水稲用の農薬を使うとのことでした。

従来は人が農薬の入ったタンクを背負って田んぼの中に足を踏み入れて散布していたため大変な重労働で時間がかかっていたものを、空から自動で散布することで効率化できる、とのことでした。

また、新製品として「ジャンダルムMX豆粒250」も紹介されました。

豆粒上の錠剤が水田に落ちた後、横方向に拡散していくので1回の散布でカバーする面積が大きくなり、自動航行のコース幅を大きくできるため、散布時間を短縮できるというものでした。

<図7:ノビエの雑草害> <図8:アクシズMX> <図9:ジャンダルムMX豆粒>

 

機体の説明

DJI JAPAN 岡田氏が、散布に利用する機体の説明と、散布のプロセスについて説明されました。

機体は「AGRAS MG-1」、RTKを搭載し、レーダーで障害物を検知する機能もついているそうです。
風速は8m/sまで耐えられるとスペックではありますが、あまり強いと安全管理の問題の他、農薬が風で流れる「ドリフト」という現象を起こしてしまうため、風速3m/s程度で運用するのがよいとのことでした。

また散布のプロセスですが、

 測量 → 地図作成 → 散布ルート設定 → 農薬散布(自動航行)

という流れで今回行うとのことでした。
圃場の地図を最新にしてから、自動航行の設定を行うということでした。
測量には「Phantom 4 RTK」を使うとのことでした。

さらに、今回は「AGRAS MG-1」2台を使った「編隊飛行による自動航行農薬散布」のデモも行うということでした。

2台同時に航行させることで、短い時間で多くの散布を行うことができるということで、編隊飛行そのものがまだこれから拡がっていく段階の技術ですので、そのデモを見られることは貴重な体験でした。

<図10:AGRAS MG-1> <図11:自動航行の流れ> <図12:編隊飛行>

 

デモ飛行① 測量+散布

会場の南側の圃場では、地図を作るための測量のため、Phantom 4 RTK の自動飛行から始まりました。道路脇から離陸し、高度60mで画像を取得、着陸も自動でした。

そしていよいよ、AGRAS MG-1 による農薬散布のデモです。

高度2mと非常に地表に近い位置を飛行しましたが、RTKによる高精度測位で安定した飛行でした。

安全のため、圃場の道路側は5m内側までが自動航行の範囲としていたため、その5mの範囲は手動操縦で散布が必要とのことでした。

<図13:AGRAS MG-1 による自動航行>
※画像をクリックするとYoutube動画にページ遷移して自動航行の様子を見ることができます

 

デモ飛行② 2台同時自動航行

今度は会場の北側の圃場に移動し、AGRAS MG-1を2台使った編隊飛行のデモでした。
オペレータは1人、補助者が1人で、2台の自動飛行を実現させていました。

途中で乱れることもなく、また車両通過のため一時中断も滞りなく行えていました。

一通りデモが終わった後は、農薬を新製品「ジャンダルム」に詰め替えての散布でした。
自己拡散する様子を見ることができました。

<図14:AGRAS MG-1 の編隊飛行による自動航行>
※画像をクリックするとYoutube動画にページ遷移して編隊飛行の様子を見ることができます

※同じ圃場に連続して農薬を散布するのは作物にとって好ましくないため、今回のデモでは農薬成分の入っていない粒剤が用いられました。

質疑応答

デモが終わったあとは、3社の代表が手を取り合った姿の記念撮影と、会場からの質疑応答の時間でした。

農業関係者、ドローン関係者、双方から10人を超える方々から活発な質問がされ、期待の大きさを知ることができました。

<図15:3社代表の記念撮影(左から、呉氏、横田氏、的場氏)>

 

従来の重労働を効率化することで、農業を「辛い」から「楽しい」「格好いい」ものにしたい、というメーカーの方の声も聞かれました。

まとめ

今回のデモから勉強させて頂いた点は下記の通りです。

・DJIとシンジェンタが業務提携し、ドローンによる農薬散布の実証実験を加速していく
・AGRAS MG-1 の編隊飛行の自動化は、5台まで可能。
・今後複数台の運用がオペレータにも求められていくと思われる。
・農薬自体の開発も進み、「自己拡散型」の農薬は少ない飛行時間で散布が終わるため効率的。

人手による農薬散布作業は、担い手の高齢化により生産性の向上は至上命題です。
今回のデモの形は解決策の一つとして注目されていくのではないかと思います。

同時に、ドローンを運用するオペレータにも「複数台同時制御」という新しい安全管理のノウハウを身につけていく必要がでてきた、ということでもあると思います。

未来感溢れるデモであったと同時に、ドローン事業に関わる人間のスキルアップも必要だと改めて感じた一日でした。

<関連リンク>
全国稲作経営者会議
DJI JAPAN 株式会社
シンジェンタジャパン株式会社
有限会社 横田農場

シェア
前の記事ドローン初心者は何から始めるべきか?⑦ ~ドローンの訓練を続けよう(後編)~
次の記事ササモモ流、ドローンのキャリア「0→1」のつくり方
Takayama
高山誠一/高山ドローンリサーチ株式会社 代表。無人移動体に関する人材育成・コンサルティング・研究開発・安全管理を行う。 2013年 SIer(システムインテグレータ)に入社、SEとして複数の企業システムの安定稼働を支える。 2008年 航空測量会社に入社、主に自治体向けのシステム構築の傍、AWSをいち早く取り入れ可用性向上の基礎を作る。UAV測量の技師として測量業務にも従事、UAV測量講習の講師としても関東を中心に全国で講義を行った。 ドローンが空だけでなく陸海空で活躍する社会インフラとなり産業として発展することを願い、「TDR (Takayama Drone Research)」というFacebookページを個人の活動として2018年10月より開始、会社設立後の現在も毎日更新中。  JUIDA認定講師、DJIスペシャリスト、技術士(情報工学部門)、MOT(技術経営学)、測量士、第三級陸上特殊無線技師、第四級アマチュア無線技師。