「ドローンでひらく、新たなキャリア」連載では、ドローンが気になる、けど仕事になるの?という疑問や不安を解消すべく、ドローン業界で先人たちのキャリアや価値観を伺いご紹介させていただきます。
連載第2回は、ドローンスクール講師、ドローンブロガー、YouTuberとして活躍し、主婦でもあるササモモさんに、「スキルも経験もゼロ」から「好きなことを仕事にする」ために大切なことを女性視点で語っていただきました。
好きなことで「誰かの役に立つ」
−−ドローンに出会ったきっかけは?
2014年に夫と出かけた旅行先で、たまたまドローンを見かけて、「なんだ、あれ!?」って衝撃を受けたことがきっかけです。当時は、ドローンという言葉も知りませんでした。
−−ドローンをお仕事にしようと思った理由は?
昔から最新ガジェットやパソコンが好きで、紙で最新PCを作って両親にプレゼントするような子どもでした。仕事もその軸で選んできて、家電量販店でのパソコン・周辺機器販売や、結婚後にはパソコンスクールを開業しました。
ドローンに出会った頃は、パソコンだけでなくタブレットなど、新しいデバイスの活用が進み、「新しい何か」をまさに探していたとき。自分としては自然の流れで、みるみるドローン沼にハマっていきました。(笑)
−−ドローンスクールにも通ったのですか?
はい。スクール卒業後すぐには、ドローンをお仕事にするため、何から始めればいいのか分からなかった私は、「ドローンのことをやりたい」と、とにかく発信しました。言い続けることで、チャンスに恵まれたのだと思います。
−−言い続けたことで、どんな変化がありましたか?
講師アシスタントや、イベントの裏方から司会まで、さまざまお声がけを頂きました。現場での振る舞い方やドローンの扱い方などを、先輩方と行動をともにして見て学びたいと考えていたので、無償であっても何でもやらせて頂きました。
−−同時期から、ブロガー・YouTuberとしても活動を開始した?
はい。私がドローンに出会った頃や、2015年に首相官邸でドローンが墜落しニュースになった時も、ドローンに関する情報はあまり多くなかったです。情報が欲しい人は絶対にいるから、「私がそれを作ろう」と思いました。
ブログや動画を作っても、最初はマネタイズできません。でも、「他人に与えれば、絶対に自分に帰ってくる」そう信じて、私なりに必要とされている情報を発信しようと考えていました。
−−現在は、マネタイズできるようになった?
はい。機材レビューや、スクール講師など、いくつかのドローンに関するお仕事を掛け持ちする形で、一昨年ようやく、夫の扶養を抜けました。3年がかりで。(笑)
私はたまたまドローンに惹かれて、パソコンからキャリアシフトしたけれど、ドローンはあくまでツールです。ドローンが好き、ドローンで稼ぎたい、と自分よがりになるのではなく、「誰かの役に立つ」ことを忘れないようにしていれば、お金はあとからついてくる、と実感しています。
好きなことは「自分史」から見つかる
−−ドローンにキャリアシフトする時、迷わなかったのはなぜだと思いますか?
20代の頃は自分の適職に悩み、転職回数も多くて苦しかったのですが、機械が好きだし得意なほうだと自己理解していたので、ドローンに出会ったすぐに「次はこっち」と選べたのだと思います。
一方で私がドローンに出会った頃は、パソコンのほかにもタブレットなど新しいデバイスが登場してきた時代で、自分も変わっていかなきゃいけないと薄々考えていました。
自分のポテンシャルと、時代の流れ、両眼からキャリアを見つめることで、新しい道を生み出すことができたのかな、と思います。
−−「好きで得意」なことは、本人にとっては当たり前であるがために、自覚しづらい方も少なくありません。
これまでやってきたことを年表に書き起こして、「自分史」を作るとよいかもしれません。ずっと続けていたことが、誰にも絶対あると思います。自然と続けていることは、誰が何と言おうが好きだし、得意なことなのです。誰かと比較して「私なんか」と否定する必要はないのです。
自分史を書き出してみて、改めて好きだと思うことにマルをつけたり、自分史を眺めながら思いついたことをやってみると、「好きで得意」なことを自分の強みとして磨いていけるのではないでしょうか。
好きなこととキャリア、家族とのバランス
−−個人事業主になる、ドローンを始める、キャリアチェンジについて、家族の理解はどのようにして得たのですか?
正社員かフリーランスかといった働き方だけではなく、なぜ、どんな仕事をして、仕事を通じてどんな風に成長したいのか、「自分がどうありたいか」を起点に、次のステップを話し合いました。
あと、ドローンはお金がかかるということは正直に伝えて、趣味だったゴルフを止めました。ドローン沼に入る期限も「15年」と、最初に決めて約束しています。
女性は結婚すると、いずれ子どもを持つかもしれないし、両立への不安からキャリアをセーブしがちです。でもだからこそ、好きなことを仕事にするって、大切なのではないでしょうか。好きなら、失敗してもつらい時でも、笑っていられると思うから。
−−困難なときも笑顔でいられるなら、家族にとってもプラスですね。
はい。実は夫も、会社員を辞めて個人事業主になりました。彼が仕事の向き不向きについて考え続けていることは知っていたので、悩みのルーティンから抜けられた理由を聞いてみたのですが。
「一番身近な人が、自由に楽しそうに仕事をしている。良いことも困難なことも、全部楽しそうに受け止めている姿を見て、自分もそういうふうに仕事と向き合いたい。」そう言ってくれたことは、とても嬉しかったです。
−−家庭と自分のキャリアの両立を、上手にやっていく秘訣は?
「家族と一緒に生きていくため、一緒に幸せになるために働いている」と、ちゃんと自覚することと、相手にも伝えることでしょうか。好きにやらせてもらっているからこそ、生活リズムを崩さない、無理して働かないことも気をつけています。
なので、時間の使い方は重要です。やりたいこと2割、やらなきゃいけないこと6割、2割は家族、夫との時間を確保できるように、と。その中でも「誰かの役に立つ」ことにできるだけ多くの時間を使えるように、試行の連続です。
ドローン操縦士ではなく管理者を育成したい
−−今後のドローン人材育成について、お聞かせください。
いま急速に、産業界でのドローン活用が進もうとしています。私が講師をつとめるドローンスクールでも、測量、建築、地図作成、ビッグデータ関連など、業務用の方が増えて来ました。
今後は、ドローン操縦士を目標とした指導ではなく、ドローン操縦のスキルを持って管理者側に回れる人材を育成したいと考えています。そのためには、様々な撮影現場の経験や、実際に飛ばしていろんな事案に出会うことが大事です。
−−今後の夢を教えてください。
私から見た情報にはなってしまうけど、海外の動向や日本がドローンをどう活用していくのか、その結果として先々の生活はどう変化していくのか、などをこまめに伝えていきたいと思っています。
ドローンをツールとして使って、誰かの役に立てる、誰かを元気にできる、活性化させられる人でありたいですね。
佐々木桃子(ササモモ)氏プロフィール
2015年、専業主婦からドローンパイロットをめざし、事業を開始。女性の活躍とドローンを合わせたキャリア形成の火付け役として活躍。現在、株式会社ジュンテクノサービス取締役、ドローンスクールDアカデミー関東埼玉校講師、水中ドローン安全潜航操縦インストラクターとして埼玉県内を中心にドローン事業に携わる。
公式サイト:http://sasamomo.com
編集後記
自分の好きで得意なことと、時代のニーズを掛け合わせて、スキルも経験もゼロの状態から好きなことを仕事にするための行動を積み重ねてきたササモモさん。家族とそれを共有しながら歩んできたことで、家族がより豊かに暮らすためのエンジンになっている姿が印象的でした。未婚の女性の9割が、将来的な家庭と仕事の両立に不安を抱く現代。ササモモさんが切り開いて来た道に、一筋の解を見た気がします。また、産業界におけるドローン人材育成についての見解も考えさせられました。次回は、産業用途に焦点を当てドローンのキャリアを紐解きたいと思います。