3D RoboticsのCEOであるクリス・アンダーソン氏、日本の無人飛行機の自動制御の第一人者である千葉大学特別教授 野波健蔵氏、都市部での配送の実証実験で注目される千葉市長の熊谷俊人氏の3名が、新経済連盟の主催する新経済サミットで行われた「産業用ドローン時代の幕開け」と題されたセッションに登壇、それぞれの熱い想いを語りました。
ドローンが地球全体をデータ化する
北米最大のドローンメーカー3D Robotics社のCEOアンダーソン氏は「ドローンは空飛ぶセンサーであり、収集されるビックデータに大きな価値を感じている」と語り、物理的な現実世界をデータ化し分析することで、農業や土木や建築業、不動産業、保険業、捜索や救助など幅広い産業に影響を及ぼしていくと予想しました。
私たちに身近な例として、Google Earthに代表されるような人工衛星から見た地球の様子とGoogle Street Viewによる道路を例に示して、これからはこの2つの中間に位置するドローンが地球の姿と刻々と変化する様子を捉えるようになると説明。「ドローンの登場が、人類が本当の意味で世界を理解することにつながっていくだろう」と語るアンダーソン氏には、デジタル革命の次のステージがはっきりと見えているようでした。
ドローンが空の物流革命を日本から実現する
NASAで2年間ヘリコプターの研究に携わり、1998年から日本で自立飛行の研究に取り組んできた千葉大学の野波教授が創業した自立制御システム研究所は、従業員が40名を超える国内最大規模のドローン企業です。そんな日本のドローン業界の第一人者である野波氏は「空の産業革命が期待されるドローンだが革命は物流革命で起こしたい。コストを下げてサービスは向上できる」と語りました。
さらに、「1台で飛んでも意味はない。ドローンが数珠つなぎで飛ぶようにしなくてはビジネスにはならない」ということで、ドローン同士が通信しながら飛ぶエアトラフィックコントロール(航空交通管制)の重要性にも触れました。
また、主催するミニサーベイヤーコンソーシアムには既に全国で220の企業が参加し、物流革命の成果を日本からグローバルに展開してしていく準備を整えるなど、ドローンが物流を担うようになる未来をイメージし、そのときを1日も早く実現させたいという熱い想いが伝わる内容でした。
そして、その想いを実現する第一歩となる実証実験の場を提供する千葉市の熊谷市長は「配送をビジネスにするためには都心部で成功する必要がある」として、湾岸の倉庫から幕張の住宅地区への10キロを超える海上輸送や高層マンションの高層階への垂直輸送の検証を進めるだけでなく、新たに建築する高層マンションにはドローン配送を実用化するための仕組みを設計段階から取り入れていくと語りました。
プライバシーや安全性における現実的な基準作り、地域住民の理解を得るための活動、法整備などで行政としてのバックアップを進めていくことにも強い意欲を示し、「国家戦略特区」である千葉のドローンへの本気度がひしひしと伝わる内容でした。
ドローンは自分には関係ない世界の話だと思っていた多くのビジネスパーソンに、新たな時代が始まりつつあることを強く印象付けるセッションだったと思います。