楽天によるドローンの有料配送サービス「そら楽」であったり、幕張新都心での配送実験だったりと、ドローンによる配送のニュースが相次いでいますが、そこで使われているドローンのことをご存知でしょうか。いずれも、ミニサーベイヤーと呼ばれる自律飛行を特徴とした国産ドローンが使用されています。
ミニサーベイヤーコンソーシアムとは
株式会社自律制御システム研究所(ACSL)が開発するドローン「ミニサーベイヤー」の産業利用の促進とオープンイノベーションによる技術開発を行っているのがミニサーベイヤーコンソーシアムです。
2016年春には、大阪や関西、中部といった地域部会を相次いで設立して全国規模の組織に拡大、220を超える企業や機関が会員となっています。ドローンを使ってサービスを提供する企業、機体や部品を作るメーカー、販売店、教育機関に至るまでドローンのビジネスに関わる様々な立ち位置の企業が参加していることが特徴です。
ミニサーベイヤーコンソーシアムの会長で、日本のドローン研究の第一人者でもある千葉大学特別教授 野波健蔵氏は、一般社団法人化にあたって「日本が先頭に立って新しい産業を創出するためにより一層責任ある活動をしていきたい」とし、3つの領域で活動を強化していくことになるようです。
- 電波法の改正や安全管理のガイドラインの策定といった国の政策や制度設計への貢献
- 地方公共団体との連携、販売特約店やライセンス企業によるミニサーベイヤーの生産・販売・メンテナンスの体制作り
- ドローンの技能教育に対する技能検定の有料化による事業化
実際、先日行われた国際ドローン展においても、金井度量衡や菊池製作所、NECなど多くのブースにミニサーベイヤーが展示されていて、空の産業革命を実現するオールジャパンの体制が整いつつあることを感じました。
国際ドローン展の模様はこちらの記事を参照ください。
空の物流革命を実現するための研究開発
幕張新都心での配送実験は成功したものの、物流にドローンを利用していくためには、越えなくてはならない壁がまだ幾つも残っています。技術面の課題を解消するための研究が行われているので、ここで幾つかご紹介したいと思います。
複数台で編隊飛行を行うドローン
4月に行われた新経済サミットで野波氏は「ドローンが数珠つなぎで飛ぶようにならないと産業にはならない」と語っており、編隊飛行は空の物流革命を実現するにあたって重要なテーマの1つとなっています。
新経済サミットでの野波氏の発言の詳細は、こちらの記事を参照ください。
水素燃料電池とリポバッテリーのハイブリッド動力で飛ぶドローン
荷物を運ぶためのペイロードを確保しながら長時間の飛行を可能にするのに欠かせない動力についても様々な研究が行われています。動力をハイブリッド化することで水素を利用できるようになれば、重たいバッテリーを何個も用意する必要がなくなります。
雨でも飛行できる防水性を兼ね備えたドローン
物流を担うためには、雨の日も風の日も含め365日の飛行が求められます。完全防水型の水面浮上機体の研究開発は物流ビジネスには欠かせない要素と言えます。
プロペラが1つ故障しても飛行を継続できる信頼性
大切な荷物を運ぶわけですから、部品が1つ故障したぐらいで墜落したり配送が遅延したりするわけにはいきません。ミニサーベイヤーは基本的に6つのプロペラを持っていて、プロペラの1つが停止しても飛行し続けることができるフォールトトレランス制御の機構を組み込むことが計画されています。そして、この他にも、バッテリーの自動交換システムや、長距離高速飛行を可能にするVTOL機など、ドローンによる物流に必要となる技術全てに日々取り組んでいるようです。
このような高い技術力にコンソーシアムのチーム力が加わることで、空の産業革命を日本から実現するというミニサーベイヤーコンソーシアムの取り組み。オールジャパンの体制でその夢が現実になる日が来ることを期待したいと思います。