ドローンを巡る法規制が去年12月に施行されてから5ヶ月が経とうとしています。この間、事故や紛失など、テレビ・ネットでニュースになるケースも多少見られました。お城で飛ばして落ちてしまったり、夜間にフライトさせて書類送検されたりと、法規制が周知徹底されている訳ではないようです。飛ばす側の言い分として「申請が必要なのは知っていたが、面倒だった」というものが多く見られるのは今後の課題とも言えます。
確かに身近で手に入れることが出来るホビー製品を使用するのに「申請・許可」が必要なのは、「面倒」と言いたいのもよく分かります。せっかく高いお金を払って自宅でも空撮を…と思っても、「それ、許可得ましたか?」となっては気分は萎えるでしょう。
フライトエリアが広がる可能性は?
では今後、ドローン規制は厳しくなるのか? 答えは「Yes」でもあり、「No」でもあります。まず「No」で言うと、去年12月に施行された改正航空法については、フライト出来るエリアが若干広がると言われています。例えば河川で輸送用ドローンの航路として活用する方向で検討されています。
新たにルール作りがなされる分野は?
「Yes」で言えば、例えばの農業分野、農薬散布向けです。3月末に農林水産省は農薬散布向けドローンの活用について指針を打ち出しました。農林水産航空協会が認定した機種であることや操縦者の技量を計り、認定されること、さらには認定整備士を置いて、定期的にメンテナンスすることなど細かに明文化されました。農薬散布といえば無人ヘリでの散布が有名ですが、今回明文化された指針の元祖として既に厳密に運用されています。
1機1000万円以上と言われるこの農薬散布用無人ヘリは、あまり知られていないだけで、非常に多くの規則と技術要件をクリアした上で飛んでいるのです。無人ヘリの操作を覚えるための教習所があり、トラブルが起きた際にはクルマと同じように整備士がいます。こうしたバックアップがあってこそ安定した運用に繋がっていると言っても過言ではありません。
ドローンのほうが簡単に飛ばせるだろうから必要ないのでは? と考える方も多いかも知れませんが、実際のフライト方法も厳密に決められることになります。例えば穂先から何メートル以内で散布しなさい、といったことまで決められています。好きに飛ばして散布して良い訳ではないのです。
ここまで厳密に運用基準を決めるのは、農薬を使用するからなのですが、この農薬についても農薬取締法があり、通常使用するにも規制があります。さらに無人ヘリから撒く農薬については使える種類が指針で決められています。万一農薬を撒きすぎた、不適切なものを撒いた、となれば食品衛生法にも問われかねないのです。これほどまでに厳密に、そして詳細に決められていることに私自身も驚きました。しかし、言い換えれば日本の農産物が厳密に管理されている証とも言えます。
このようにルール作り、法律、規制などはすべて私たちの普段の生活を守るために設定されます。一見過剰と思われるものであっても、万一を考えて作られているのです。ドローンのルール作りはまだ始まったばかり。今後、実態に合わせてルール作りされるだけでなく、これから始まる活用方法に合わせて設定されることになります。