栃木県那須烏山市。失礼ながら、この市の名前を聞いて、栃木県のどこにあるかをしっかり説明できる人は少ないかもしれません。
緑の絨毯が広がる地へ
宇都宮の北東部。さらに東には茨城県の水戸市が近く、小高い山と谷が段々に連なり、間を那珂川、荒川、という大きな河川が流れる地。
このような場所で、特に水利に恵まれ、米や果物、野菜といった農作物に恵まれた地でもあります。特にお米は皇室に収める献上米を作っている田もあり、その田園風景は季節を問わず落ち着かせる、日本の原風景の一つと言えます。
こうした田園風景をドローンで空撮する魅力の一つは、水、太陽、緑、作物、これらが一体となって美しさを放つ時をとらえる瞬間に他なりません。
ですが、ここにもう1つ、空撮の魅力をさらに引き立てる被写体があります。
烏山線。田園の中を縫うように走るその雄姿は、空撮する側から見ると、他に視界を遮ることなく追うことができます。そしてまるで買ってもらった新しいおもちゃを眺めるように、ワクワクと童心に帰りながら撮影できるのが、さらなる魅力となっています。
電車を空撮する際の注意事項
そうは言っても、電車などの交通機関の撮影には最新の注意が必要です。
国交省の飛行マニュアルでは、このように記載されています。
(飛行マニュアルのリンク) http://www.mlit.go.jp/common/001218180.pdf
5ページ
「 ・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。」
少々悩ましいのは、「上空やその付近」という言葉の定義がはっきりしていないことでして、いったいどのくらいの距離に近づくと禁止された距離となるのか、明確ではありません。また、この飛行マニュアルはあくまでテンプレートであり、この飛行マニュアルをベースに、独自の飛行マニュアルで申請することも可能であり、ここに上記のように書かれていても、それがそのまま飛行禁止ということに直接つながるとは言い切れません。
そこで、同じく国交省の「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン(平成31年4月26日改正)」を見ますと、こちらは明確にその定義が書いてあります。
(ガイドラインのリンク) https://www.mlit.go.jp/common/001287979.pdf
8ページ
「 鉄道車両や自動車等は、トンネル等目視の範囲外から突然高速で現れることがあります。そのため、それらの速度と方向も予期して、常に必要な距離 (30m)を保てるよう飛行させてください。」
かなりわかりやすく指針が明記されています。これで、どの程度の距離を保てば空撮できるのか、理解できたわけです。
常に必要な距離である30mという基準を守って飛行させること、これがまずは頭に入れておくべきルールになります。
そして、再度、飛行マニュアルの文言に戻りますが、30mルールがわかったとしても、このように心構えが飛行マニュアルにはあります。
「 運航者は、本マニュアルの遵守に加え、使用する機体 の機能及び性能を十分に理解し、飛行の方法及び場所に応じて生じるおそれがある飛行の リスクを事前に検証した上で、追加的な安全上の措置を講じるなど、無人航空機の飛行の 安全に万全を期さなければならない。」
私達は、このように熟知した上で、安全に配慮した飛行・空撮をしなければいけないのですね。
注意事項を守った上で、電車の撮影の仕方
最低限のルールを理解したところで、電車空撮上の押さえておきたいポイントを記します。
あくまで、これは筆者が心がけている事なので、もっと適切なポイントもあるかもしれません。ぜひご意見をいただきたく思います。
1.電車の前方に位置しない
これは、特に電車の運転手さんを不安がらせないためになります。低い高度で前方にドローンがいた場合、場合によっては運転手さんの判断で電車を止めるかもしれません。そのような運行上の危険を誘発するような位置にいない、が鉄則です。
もし、それでも電車の前方にいたい場合は、運転手さんの視界の邪魔にならない高い高度で見下ろすようにしてください。
2.線路や電車の真上にいない・またがない
これも鉄則です。万一運行中の電車の上に落下するようなことがあってはいけないので、真上やまたぐ飛行は絶対にいけません。
3.引きの撮影は極力避ける
電車の正面でなく、高度を上空に保って電車を待ち構えた場合、どうしても引いて撮りたくなります。この場合は、目視で後方の安全をしっかり確認した場合だけ、なおかつ目視で確認し続けるか、補助者に確認してもらいながらの撮影にしてください。
万一後方に高い木や、もっと怖いのは見えにくい電線ですね、これがあって落下した場合、電車の運行に関わる事故となりかねません。
では、どんな映像なら良いか、です。
4.電車の斜め後方から追う
スピードを合わせて斜め後方から追う映像は、気持ちよく撮れます。また、運転手さんの視界に入らず、運行も妨げません。
5.真横からエルロンで追う
これも有効ですが、可能な限り目視で障害物の有無を確認しながらにしてください、
6.上空で待ち構え、ラダーだけで追う
比較的簡単な撮影方法ですが、カーブの辺りだったりすると思いがけない良い効果の映像になる時があります。
7.高さと距離の見極め方
例えば、電柱などがあると高さの感覚がわかります。
この写真に写る電柱は、高さが20m弱ほどなので、それ以上の高さを保てば電線に引っかかることはありません。
さらに、ガイドラインに従って30mの高さを維持することで、事故の確率を大きく下げることになります。
最後に、烏山線の雄姿を。