6月13日(木)に開催された「DPA認定校フォーラム2019」。前回の記事ではDPAの方針説明と国土交通省の取り組みの紹介を前編としてお伝えしましたが、今回は後編として、インプレス総合研究所によるドローンビジネスの現状と今後の展望と、インシュアランスサービスによるドローン総合保険紹介の模様をレポートします。
インプレス総合研究所:「点検・農業や物流・搬送に伸びしろあり」
DPAの吉野氏・水野氏による方針説明と、国土交通省の伊藤氏による同省のドローン関連の取り組み紹介に引き続き、インプレス総合研究所にてドローンジャーナル編集長を務める河野大助(こうの・だいすけ)氏が登壇。グラフや表を投影しながら、ドローンビジネスをとりまくビジネスの現状や今後の展望についての説明がありました。
河野氏はまず、日本におけるドローンビジネスの市場規模について、2018年度の「機体」「サービス」「周辺サービス」の合計金額が前年に比べ85%増の931億円に上ったと説明。この中の「機体」については、測量・点検等の分野においてPhantom 4やMavic 2 Enterpriseといった手軽な機種が普及しつつある一方で、2019年以降は農業や物流、警察・消防といった分野を中心に大型機種の採用が進む、との見解を示しました。なお、インプレスでは「ドローン」を「無人機」と定義していることから、「機体」の中にはローバー型(陸上型)、ボート型(水上型)、潜水艦型(水中型)等も含まれる、とのことです。
出典:「ドローンビジネス調査報告書2019」
2018年度以降市場の最大割合を占めるとみられる「サービス」については、ドローンを活用した業務を提供する企業の売上(ソリューションの一部分でのみドローンが活用される場合はその部分の売上)を積み上げたものとのこと。なお、企業や公共団体が、自社で保有するドローンを活用した場合は、外部企業に委託を行ったものを仮定した上で推計しているとのことです。
「周辺サービス」には、バッテリー等の消耗品代金、定期的な保守・メンテナンス費用、人材育成や保険等が含まれるとのことでした。
この最大規模を占める「サービス」市場の規模については、河野氏より続くスライドでさらに詳しい説明がありました。
出典:「ドローンビジネス調査報告書2019」
現在サービスの領域において、すでにある程度の市場が確立されているのは、農薬散布や空撮、土木測量、ソーラーパネルや屋根等の設備点検といった分野とのこと。先ほど、「測量・点検等で手軽な機種が普及」「物流で大型機種採用が進む見込み」との言及がありましたが、これらがサービス市場規模とも連動している模様です。
2019年度以降の物流分野におけるサービス市場の動向について、河野氏は「通常時」「緊急時」のそれぞれのケースに分けて有望とみられる領域を挙げました。まず通常時(救助・災害対策等を除くもの)については、2019年内に商用サービス開始を宣言している楽天の例※に触れ、「今後は搬送・物流の領域に効いてくるのではないか」との見方を示しました。他方、緊急時(救助・災害対策等)については、おもにアフリカでドローンを使った医薬品の搬送を手掛けるZiplineの例を引用しつつ、このようなユースケースが「日本でも場所により見られるようになるのではないか」としました。
河野氏は最後に、国内ドローン市場の今後の展望として、下記の点を示してプレゼンを締めくくりました。
- 中型・大型機の普及や非GPS環境への対応の進展
- 自治体向けソリューションや各種点検・農業等の分野の拡大
- 多様かつ分野専門的な人材育成の気運
- ドローンのセキュリティ対策のニーズ拡大
- 国産ドローンの実用化進展の可能性
※楽天が西友と実施予定の商用配送サービスについては、当メディア記事もぜひご参照下さい。
インシュアランスサービス:「『間接的なけが人』もカバーする他社にない補償内容」
最後に、株式会社インシュアランスサービス(東京海上日動代理店)東京営業部の細川直子氏ほか担当の方々から、「DPAドローン総合保険制度」についての紹介がありました。
DPAでは、ドローンの安心・安全に対する社会的信頼の向上や、ドローン飛行に関連した事故が発生した際の被害者救済のため、2018年2月よりDPAドローン総合保険制度を創設、DPA認定ライセンス付帯型の保険サービスの提供を開始しており、当パートはその補償内容や運用方法についての説明でした。
インシュアランスサービスでは、2017年11月に岐阜県大垣市でイベント中に菓子まきドローンが落下しけが人が発生した事故を例に挙げ、「けが人のすべてが『ドローンによる直接的な被害』を受けたわけではない」と説明。逃げようとして押し倒され負傷するなどの「間接的なけが人」が発生する事例が出てきている、としました。
そうした中、このDPAドローン総合保険では、こういった間接的な被害者に対しても補償する内容であることを説明。この点が他の保険とは大きく異なる、と優位性を強調した上で、フォーラム参加者であるDPA認定ドローンスクールの代表者らに対し、DPA認定資格合格者へ同保険制度を積極的に推奨してほしいと呼びかけました。