新生DPAのキックオフイベント・「DPA認定校フォーラム2019」参加レポート(前編)

6月13日(木)、「DPA認定校フォーラム2019」が開催されました。今回はこちらの模様をレポートします。

まず・・・DPAって何をしているところ?

本題に入る前に、改めてDPAについて簡単に整理したいと思います。

一般社団法人ドローン操縦士協会(略称:DPA(ディーパ))は、ドローン航空業界の安全確保につとめ、当該技術・知識の普及と諸般の研究調査を行い、ドローンの健全な発展を促進する団体で、ドローンに関連する資格「回転翼3級」等の発行を行っています。
参考までに、ドローンに関連するおもな民間資格と、その発行団体をまとめました。

団体名 発行する資格 
※主なもの
URL
DJI JAPAN 株式会社 DJI CAMP技能資格  https://www.dji.com/jp/newsroom/news/dji-japan-camp
ドローン検定協会株式会社 ドローン検定 https://drone-kentei.com/
一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)

ドローン操縦士
回転翼3級

https://d-pa.or.jp/project/certification/
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)

無人航空機操縦技能
無人航空機安全運航管理者

https://uas-japan.org/business/school/

※記載は出典での掲載順
出典:国土交通省「航空局ホームページに掲載されている講習団体を管理する団体」他より筆者作成

このように、ドローンに関連する民間資格を発行する団体は、DPA含め複数存在します。
現状、ドローンに関する国家資格は存在しませんが、自動車運転免許のような国家資格を創設する必要性がかねてより一部で叫ばれています。政府主導の「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」にて決定された「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」の構想が現実化した際には、同協議会の民間構成員であると同時に、国のドローンに対する要件を具現化した資格の発行団体であるDPAの存在は、さらに重みを増すのではないかと考えられます。

全体のアジェンダ

今回のフォーラムは、DPAの2019年度キックオフとして開催されたもので、DPAの運営方針を認定校へ共有すること、また「回転翼3級」を始めとするDPA資格のさらなる認知度向上に向け、認定校の理解と協力を得ることが主な目的でした。

当日は、まずDPAより開会の挨拶と運営方針についての説明があった後に、国土交通省の方やドローンジャーナルの方からドローンビジネスをとりまく法制度や実ビジネスの現状についての説明がありました。さらにその上で、ドローンビジネスの現場を支える「DPAドローン総合保険」について、インシュアランスサービスの方から紹介がありました。

  • 「開会ご挨拶」および「2019年度DPA運営方針について」:一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)代表理事・吉野次郎氏、理事・水野慶太氏
  • 「無人航空機に係る航空法の概要と環境整備に向けた取組」:国土交通省 航空局安全部安全企画課 専門官・伊藤康浩氏
  • 「ドローンビジネスの現状と将来像2019:株式会社インプレス ドローンジャーナル編集長・河野大助氏
  • 「DPAドローン統合保険制度について」:株式会社インシュアランスサービス(東京海上日動代理店)東京営業部・細川直子氏
  • 「閉会ご挨拶」:一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)代表理事・吉野次郎氏

本記事ではそれぞれの部に分けて、ハイライトをご紹介します。

フォーラム参加者は、DPAの認定ドローンスクールの代表者が主でしたが、遠く佐賀県や滋賀県、福島県・岩手県等からも参加がありました。

DPA:「認知度向上と『アプリケーション』部分の拡大を目指す」

オープニングではまず、このほどDPAの代表理事に就任した吉野次郎(よしの・じろう)氏が登壇。就任以降、順次体制を変えていき、今後さらに飛躍させていこうという意気込みを述べつつ、6月がDPAにとって年度始めの月であるというタイミングも踏まえ、当フォーラムが新生DPAのキックオフである旨を宣言しました。

吉野氏はDPAの施策として、大きく次の3点を挙げた上で、同理事の水野慶太(みずの・けいた)氏にバトンタッチしました。

左:DPA・吉野氏 右:DPA・水野氏

DPAの重点施策

  1. 回転翼3級の資格発行プロセスの効率化・円滑化
  2. 回転翼3級の認知度向上と差別化戦略の推進
  3. ドローン人材育成のための施策確立と実行

吉野氏からバトンを引き継いだ水野氏は、まず1. について、「回転翼3級の発行から2年が経過し、ライセンスの更新が始まっている」ものの、作業に個別対応・属人的な部分があり、新規発行作業と合わせると作業がひっ迫する事態だとした上で、この状況を改善するため、新システム(Salesforce)の導入や新規発行・更新業務の標準化等に着手していると話しました。

次に2. について、「回転翼3級の強みがドローン関連資格の受講希望者に認知されていない」とした上で、対応策として次のような計画を挙げました。

  • 差別化要因の整理…「系統立ったカリキュラムであること」「全天候型・常設の施設を保有すること」等、他の資格と比較した場合の強み再整理を実施
  • Webサイトの刷新…利用者に分かりやすい導線、充実したコンテンツを目指し、今年の7・8月をめどにホームページの大幅改修を予定
  • 情報発信の強化…SNSの活用、プレスリリースの配信、外部メディアの活用を通じた、コンテンツ充実と更新頻度増加の実現

また3. について、今後は基礎となるドローン操縦に加え、点検・農業・測量といった「アプリケーション」部分のサポートも積極的に行っていきたいとし、認定各校のサポートを得ながら具体的な検討を進めたいと述べ、フォーラム参加各校に理解と協力を求めました。

国土交通省:「レベル4実現に向け、既存の安全確保の取組み実績を踏まえた制度作りが急務」

続いての登壇は、国土交通省 航空局安全部安全企画課 専門官の伊藤康浩(いとう・やすひろ)氏。伊藤氏からは、ドローンに関わる国土交通省の取り組みについての紹介がありました。

伊藤氏は、ドローンの飛行申請件数が年々増加している状況をグラフで示し、 無人航空機に係る航空法施行(平成27年12月10日)後、令和元年5月31日までの間に国交省が受領した申請の件数は、累計で8万件を突破していると説明しました。

また、許可承認状況の昨今の特徴として、1. ドローン飛行の目的別に見た場合、「測量」「インフラ点検・保守」「事故・災害対応」が拡大し、相対的に「空撮」の割合が増加していること、2. 「30メートル以内」や「DID※1」地区での飛行の関する申請が多いこと、が挙げられるとした上で、ドローンに関連する事故件数も逓増している、と指摘しました。

伊藤氏は、産業分野でのさらなるドローン普及が期待される一方、安全上の課題も発生しているこのような状況に照らし、専門家と関係省庁が協議する場として発足した「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」にて、特に早急な対策が必要、かつルール化の素地がある程度整っている項目(図参照)について、現在検討が急ピッチで進められていると話しました。

出典:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会・第10回資料

折しも同日(6月13日)は、改正航空法が衆議院本会議で可決・成立した日でした。上記のうち、「飛行前点検の義務化」、「飲酒時の飛行の禁止」等が、この秋にも正式に法制度化されます。

伊藤氏はまた、上記のうちの「衝突予防の義務化」についても検討が進んでいると話し、その対策の一つとして、この4月にサービスが開始した飛行情報の共有サービス※2にも触れました。
伊藤氏はこちらの画期的な点として、1. 有人機・無人機の飛行情報が共有できること、2. 自治体のドローン関連条例(自治体が独自に定める飛行禁止エリア等)の入力が可能なこと、を挙げました。(当メディアの「飛行情報共有システム」紹介記事も、ぜひ合わせてご参照下さい)

その他、未来投資会議におけるドローンのレベル4に向けた今後の取組みにも言及、「これまで関係者が積み重ねてきた安全確保の取組みの実績をふまえつつ、レベル4※3を目指した制度作りを進めていくことがカギ」と締めくくりました。

後編では、インプレス・河野氏のスピーチや、DPAドローン統合保険の制度紹介について、概要をレポートします。

※1 DID:Densely Inhabited Districtの頭文字を取ったもので、人口集中地区をさす。現在、航空法ではDIDにおけるドローンの飛行が制限されている。DIDは国土地理院公式サイトやモバイルアプリ等でも確認できる
※2 正式名称「ドローン情報基盤システム(飛行情報共有機能)」
※3 経済産業省がまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2018」で示されたもので、ドローンの利活用を4レベルに分類したもの。レベル1=目視内操縦、レベル2=目視内自動飛行、レベル3=無人地帯での目視外飛行、レベル4=有人地帯での目視外飛行