ドローンの活用領域が拡大する中、空の交通規制についての議論も進められています。
そんな中、2017年4月6日-7日にホテルニューオータニにて行われた一般社団法人新経済連盟主催の新経済サミットでは「広がるドローン活用と空の安全管理」と題したセッションが行われ、先日楽天と合弁会社を設立し日本進出を果たした米エアマップのベン・マーカス氏が登場。今回はセッション及びベン氏へのインタビューの様子をお伝えします。
”飛行”を日常生活に
ベン氏はセッションの中で、自身のフライトインストラクターとしての経験など空との馴れ初めを紹介し、エアマップとして飛行を日常生活にしたい、というビジョンを示しました。
現在各国で議論されているドローン規制についての考え、エアマップの取組についてはこう語りました。
”ドローンの規制については航空機の枠組みよりもひものない凧と捉え、それらが安全に飛行できるには、と考える方がよい。エアマップは約10万機のドローンで使用されており、ジオフェンシングという技術を使って空域情報を管理し、規制当局と操縦者の円滑な情報交換をサポートしています。”
また、自身が考えるドローンの”一般化”についての意見を展開しました。
”ドローン産業の一般消費者マーケットはまだ未熟で、本当の意味で”一般化”している状態というのは、サービスがドローンによって行われていることを意識しないレベルになることだと考えています。例えば、スポーツの空撮写真を撮りたい場合に、空撮を発注するとドローンが撮影し、その写真を自動でメールボックスに送信し、ドローン自体はいなくなるような世界です。ドローンを所有する必要はなく、このような消費者とドローンをつなぐアプリ開発にはたくさんの可能性があるはずです。”
さらに、楽天執行役員の虎石氏は政府及び企業としてのドローン、そしてUTM(Unmanned Traffic Management=無人航空管制 )について下記のように語りました。
”日本政府はドローンの商業化にかなり積極的ですので我々は政府と連携してルール作りをしていき、企業として日本からイノベーションを起こしていきたいです。また、エアマップと連携したドローン運用をすることで、ドローンが安全であることを啓蒙していく必要もあるし、集まるデータを見ることで産業動向を見ていくという狙いもあります。”
エアマップと楽天が合弁会社を通じ、日本におけるドローン運用についてどのように展開していくのか、引き続き動向に注目です。
強みは”ビジョン”と”多様性”
ベン・マーカス氏はドローンメディアのインタビューで自社の強みについて下記のように語りました。
”エアマップの強みの1つは”ビジョン”が明確にあり、未来を見ていることです。空域統制のビジネスカテゴリ自体はそんなに大きいものではありませんが、空域を拡張させていくこと、これは大きな可能性を秘めています。もう1つは多様なバックグラウンドを持つチームメンバーです。政策面やテクノロジー等の深い知識を持ったメンバーがいますので多角的に考えることができます。私自身について言えば、私は各空港との強い関係を持っており、サービス開始前から空港から空域情報の管理について相談を受けており、それがサービス開始後すぐに100を超える空港で導入が決まった背景となっています。”
ベン氏自身、この業界の進化は早く、数年後には自分達が考えつかなかったようなサービスや技術が生まれてくる可能性があると述べていました。つまり、ビジョンを実現するための手段は変わるかもしれないし、必ずしも自分たちだけがビジョン実現の担い手という訳でもないが、ビジョンが実現した”世界”に自分たちがいるだろう、という感覚。世界観を共有しつつ異なる思考回路(多様性)で捉えるメンバーが集うチームこそが都度変化する状況に応じた”手段”を生み出すことができ、その手段が周囲を巻き込むキーとなります。このビジョンと多様性のあるチームビルディングが強みの源泉という点、軸が定まっており、日本での展開を含め今後の同社の成長がとても楽しみになりました。
(取材:川ノ上和文)