現役空撮パイロットへ直撃インタビュー! 実際の空撮におけるDJI 3機種の強みとは?

空撮ドローンメーカーの代表格であるDJIの「Phantom4 Pro」「Inspire2」「MATRICE 210」の3機種について、FLIGHTSに所属するドローンパイロットの石山裕太さん(空撮事業部/インストラクター)と堀内亜弥さん(空撮事業部/DJIインストラクター)による飛行テストとインタビューを実施しました。

3機種のスペック比較

機種名

Phantom4 Pro

Inspire 2

MATRICE 210

機体写真

本体価格 20万4000円〜 38万9000円〜 応相談(200万円前後~)
重量 1.38Kg 3.29Kg(デュアルバッテリ搭載時) 3.8Kg
最大飛行時間 30分 27分 38分(フルペイロード時は24分)
最大解像度

静止画:2000万画素

動画:
4K(4096×2160)
60fps / 100Mbps

※ZENMUSE X5S搭載時

静止画:2080万画素

動画:

CinemaDNG:
5.2K(5280×2972)
30fps / 4.2Gbps

・AppleProRes:
5.2K(5280×2160)
30fps / 422HQ

※ZENMUSE X5S搭載時

静止画:2080万画素

動画:

・CinemaDNG:
5.2K(5280×2972)
30fps / 4.2Gbps

・AppleProRes:
5.2K(5280×2160)
30fps / 422HQ

最大伝送距離 4km 4km 7km
障害物センサーの有効距離 15m 30m 30m
主な機能
  • DRAW
  • Return to Home
  • Active Track
  • Tap Fly
  • ジェスチャーモード
  • DJI GO
  • DRAW
  • Return to Home
  • Active Track
  • Tap Fly
  • スポットライトプロ
  • DJI GO
  • DRAW
  • Return to Home
  • Active Track
  • Tap Fly
  • スポットライトモード
  • ポイントオブインタレスト
  • DJI GO 4
  • DJI Pilot
オススメ用途
  • テレビ番組などの空撮
  • Webサイト用の撮影
  • 室内での撮影
  • 映画などの高画質撮影
  • 動体撮影
  • その他2オペレーションによる撮影が必要な場合
  • 消防・警察の捜索救援活動
  • 送電線・橋梁等の点検・検査
  • 建設現場等の測量・地図作成

※画像引用元:https://www.dji.com/

機体の特徴や使い方について

FLIGHTS空撮事業部の石山裕太さん(写真右)と堀内亜弥さん(写真左)

Q. 今回紹介した3機種について、普段の業務で感じたポイントや使用目的を教えてください。

石山:PHANTOM4 PROについてですが、上位グレードのInspire2と比較しても、安定した飛行が可能です。室内で撮影をする際は、小回りが利くため重宝しています。

堀内:2000万画素のカメラを標準搭載しているため、Webサイトで掲載する広告であれば、PHANTOM4 PROで撮影を行っても全く問題は無いと感じています。

石山:しかし、動体撮影の場合は、INSPIRE2による2オペレーションの方が望ましいでしょう。また、同じINSPIRE2を使用するケースでも、より高画質の素材が必要な場合はX5Sを使います。それよりも高画質となれば、MATRICE 600にRONINを搭載し、1眼レフを組み込んで撮影することが多くなります。

Q. PHANTOM4 PROまたはInspire2で十分なことが多いようですが、MATRICEが必要なのは、どういった案件でしょうか?

石山:実は、動画の撮影でMATRICEを使うケースはほとんどありません。眺望の撮影など、静止画としての最高画質を追求する場合に使用します。

堀内:ほかにも、コルトン素材と呼ばれる、駅の看板広告に使われるような大型の画像を撮るのに適しています。後は夜景ですね。夜景撮影の際にはISO感度を上げることが必須ですが、撮影素子の小さいカメラで夜景を撮ると、画像にザラつきが発生してしまいます。弊社の場合、α7などの一眼レフを組み込んで撮影することが多いです。

Q. 先ほど教えていただいた使い分け以外にも、「こういう提案ができるのに」と考えていることはありますか?

石山:M210については産業用途にのみ使用されているのが現状ですが、検証でも見せた通り、非常に安定した姿勢で飛行できる機種です。PHANTOM4 PRO、 INSPIRE2の使用が難しい状況で、M210の安定性を空撮に活かすことができるのではないかと考えています。

堀内:ただ、M210の構造上、どうしても機体の足が写ってしまうことが多くなります。DJIも完全に産業用としてPRしているため、映像制作への活用は、まだ検討段階ですね。

石山:あとは、既存の産業分野で、まだドローンの活用が見出せていない分野にM210を利用できるのではないかと思います。設備の点検についてですが、例えばダムの場合は、コンクリートの剥離やヒビ割れを検査する際に、XT赤外線カメラとXT30の望遠を組み合わせる、といった使い方が出来ると思います。デュアルジンバルの強みを活かせば、利活用の幅がさらに広がるのではないでしょうか。

メンテナンスについて

Q. 普段は、どのような点に注意してメンテナンスを行っていますか?

石山:基本的には、フライトの前後にプロペラや各部品、バッテリーの点検を行っています。Inspire2に関しては、カメラ交換式の機種となるため、接続部分に砂や埃、傷がついていないかを入念にチェックしています。

Q. Inspire2に関してですが、接続部の不調で映像が映らないことはありますか?

石山:多々あります。カメラを交換する、接続部にダスターをかけるなどして動作確認を行います。

堀内:それでも駄目な場合は、内部の基盤に異常が起きていることがあるため、DJIへ修理に出しています。サポート費用はピンからキリまでといった感じですが、無償交換で済むケースが多いです。

Q. 最も高額だった修理は、どのくらいの金額になりましたか?

堀内:Inspire2ではなくMATRICE 600のケースになりますが、機体に接続しているGPSと内部の基盤が破損していたことがあり、諸々込みで8万6000円かかったことがありました。ただ、機体そのものが高額なため、そこまで割高な費用ではないと思います。

石山:機体側のトラブルだった場合は、基本的にDJIが無償で対応してくれます。パイロットの操作ミスによる落下・破損については有償と考えておくと間違いないでしょう。

Q. プロペラなどの消耗品については、どのくらいの頻度で交換していますか?

石山:何ヶ月おきに交換、といった具体的な期間は定めておらず、それこそ空撮事業者ごとに異なっていると思います。プロペラは、使用し続けていると柔らかくなり、飛行が安定しなくなります。普段から機体の挙動をチェックしていれば、早いうちに対応できるため、フライト前の機体チェックでは重点的に確認しています。

Q. プロペラの変形については、目に見えて変化が分かりますか?

石山:劣化したプロペラの場合、揚力を受ける翼端部分が、通常と比べて反っているのが確認できます。この状態になると、飛行中に高度差が発生し、ステッィクの入力に遅れて反応するなど、機体の挙動が大きく変化するため異変に気付きやすいです。ただし、初めて触れた人は「こういうものなのか」と納得してしまう位の変化なので、普段から自分で機体を動かしてチェックし続けることが重要です。

Q. 耐久性に優れる機種の場合、消耗品の劣化速度も遅いということは考えられますか?

石山:プロペラの劣化については、PHANTOM4 PROだけでなくMATRICEでも避けようのない問題です。グレードの差に関係なく、使用頻度に比例して磨耗していくと考えたほうが良いでしょう。

 

これから空撮用のドローンを導入する方へ

Q. 御社ではECサイト事業を展開していますが、機種の売れ行きについて、“この業界の企業は、この機種を買っている”などの傾向は確認できますか?

堀内:現場の制作会社の方からは、Phantom4 PROやMavic Proの購入方法について聞かれることが多いです。Inspire2は専門のオペレーターを雇う必要がありますが、Phantom4 PROは制作会社の方たちだけでも導入できる点が、興味につながっているのだと思います。

石山:Inspire2に関しては、映像制作を仕事とする方が買ったというケースが多いです。趣味レベルで購入するなら、Phantom4 PROが限界なのだと思います。最近、Inspire2用の「X7」というカメラが発売されたので、これを使った撮影を依頼されるケースが増えていくでしょう。ただ、X7単体でドローンが一つ買えてしまう価格になっています。今後、趣味レベルで空撮をしている人がプロを目指す場合、求められる基準や予算が、今より厳しくなっていくことに注意して下さい。

Q. 今後、PHANTOM4 PROを導入するにあたって、気をつけるべきポイントは何でしょうか?

石山:メンテナンスについては先ほど話しましたので、長く使う心構えみたいなのをお話します。

実は、現場でのセットアップも含め、空撮が計画通りスムーズに運ぶことは、そんなに多くありません。これは、PHANTOM4 PROに限った話ではなく、INSPIRE 2、MATRICEでも当てはまります。というのも、現場ごとにトラブルの外的要因は変わるし、アプリのバージョンが一つ違うだけでもドローンの挙動に影響が出ます。

大切なのは、こうした一つ一つの要因に対処した経験を積むことです。一つの成功体験に縛られて「これで大丈夫だ」と思っていると、実際の現場で痛い目を見ます。色々な場所でドローンを飛ばし、エラーに対して一人で対処することで蓄積される「経験値」の量が重要です。

産業用途への活用についても同じことが言えるでしょう。例えば、測量会社さんの場合だと、「ドローンを導入したけれど、使い方が分からない」という内容の電話が弊社に来ることがあります。測量の知見をお持ちでも、ドローンの使い勝手について知識がないため、業務への組み込みがスムーズに行かないのです。ますは、ネットの情報でもいいから、当事者が普段から「こうじゃないか」とトライする姿勢が大事だと思います。

堀内:メンテナンスの話に戻りますが、Phantom4 PROについては、プロペラの接続部に砂が入りやすいのでダスターをこまめに使うこと。あと、注意してほしいのがジンバルです。意外とすぐ駄目になります。今日の検証でも発生しましたが、中に異物が入ったり、ソフトウェアの不具合によってトラブルが起きるので、毎日点検を重ねるよう注意してください。

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