バヌアツで世界初、民間ドローンによるワクチン輸送が実現

12月18日、南太平洋の国バヌアツで、民間の小型無人機ドローンが遠隔地の島へワクチンを届けることに成功しました。

バヌアツの保健省がユニセフの協力を得て、Swoop AeroとWingCopterのドローン企業2社の操縦士によって実施されたこのドローン輸送試験。50kmにわたって多くの島々やウェイポイント(経路上の地点)を越えた後、搭載物を目標地点の2m以内に投下することに成功し、試験の第一フェーズを通過しました。

政府が民間のドローン企業と契約を結び、ワクチンを遠隔地に輸送することは世界的にも初めてです。

 

輸送の困難を乗り越えて支援を届ける

ワクチンの輸送範囲は、島の西部ディロンズベイ(Dillon’s Bay)の険しい山岳地帯から東部の遠隔地クックスベイ(Cook’s Bay)まで約40km。13人の子どもと5人の妊婦が公認看護師によってワクチンの接種を受けました。

クックスベイは、小さく、分散したコミュニティで、保健センターも電気もなく、徒歩か小型船を除いてはアクセスできない場所で、輸送はとても困難です。

また、ワクチンは運ぶ際に特定の温度を保たなければならず、気温が高く山がちな地形はしばしば障害となります。

そのため、国の子どもの約2割、或いは5人に1人が子どものころに必要なワクチン接種を逃しているとのこと。

ワクチンを摂取した公認看護師のMiriam Nampil氏は「ワクチンを冷却するための保冷ボックスを携帯するのは至難の業です。よく船を利用しますが、悪天候のためしばしば運航中止になります。旅路は長く厳しいのが常であるため、子どもたちのワクチンを接種しに行けるのは月に1回のみです。」と、孤島へのワクチン輸送の厳しい現状を語ります。

今回の輸送で、ワクチンは発泡スチロールの箱に、氷袋と温度の測定記録装置とともに入れられて運ばれました。ワクチンの温度が許容範囲から外れた場合には、電子インジケーターが起動するようになっており、温度管理と確実な輸送を両立することができました。

 

世界中の子どもたちの健康に、大きな可能性

バヌアツ政府は今後、長期的視点から、ワクチンのドローン輸送を国の予防接種プログラムに統合し、保健物資を輸送するといったさらに広い用途でのドローン利用も検討する予定です。

輸送試験によって得られたデータは、同様の状況に直面している世国々において、どのようにドローンを活用できるかという点の検討にも用いられるとのこと。

ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォア氏は「本日のドローン輸送は小規模なものですが、世界の保健衛生にとって大きな一歩です。初めて行われたワクチン輸送は、バヌアツにとってだけでなく、世界中でワクチンを受けられずにいる何千人もの子どもにとっても大きな可能性を秘めています。」と述べています。

世界中でワクチンを受けられずにいる何千人もの子どもたち。その命をひとつでも多く救うために、ドローンの活躍が期待されています。