ドローンクルーズ:万葉の趣に触れる 長野県千曲市・姨捨の棚田

 5月になると、棚田には徐々に水が張られます。恐らくは、田の美しさを語れる時期の一つとしては、最も良い時期と言えるでしょう。
  ここ千曲市にある姨捨の棚田は、広大な面積を持ち、棚田の数は2000枚ほどあると言われています。その広大さと美しさから棚田100選にも選ばれています。
 棚田の奥には、JR篠ノ井線が走る姿も見ることができ、棚田、電車、そして棚田の下には千曲市の街並みを見ることができます。
 場所はここです。


 この場所で、私たちは、田に映る月をドローンで愛でるために訪れました。

田毎の月とはどんな風景か

 古くは古今和歌集に「わが心慰めかねつ更級や 姨捨山に照る月を見て」という句が載っているこの地は、月の名所としても知られています。
 また、「田毎の月」をビジュアルに表現したものが、浮世絵師である安藤広重の作品。水を張った田毎に映る月は、実際には広重の絵のように1枚1枚の田に映るわけではありません。
 しかし、月を見る人が移動することによって、同じように1枚1枚の田に移り変わっていく様が、田毎の月となって見えることになるのです。

田に映る月を撮影するために

その1.空撮時期の設定

 まず、田には水が張られていなければ月は映りません。そして、その田に稲の苗が植えられてしまい、苗が成長してしまっては、これも映りにくくなります。従って、1年のうちでも田植え前の水張りの時期が最も撮影にふさわしく、それはだいたい5月の上旬あたりになります。
 さらに、ベストな月の状態は満月です。満月から多少前後しても映るとは思います。そこで、5月の田植えの時期で満月の日を探し、月の出と月の入りの時刻を調べて棚田に訪問する日時を決めます。
 ちなみに今年は、5月20日(月)前後が狙いどころでした

その2.機体の移動とジンバルの角度を模索しながら

 「田毎の月」を撮影するためには、ジンバルをどの角度にすると月が映るのか、そして、機体をどのように移動させると、月が田毎に移り行くように映るのか、その角度と移動方向と適切なスピードを模索しないといけません。
 月が田に映る角度を探すところから始めないといけません。また、時間が経つほどに月は移動し、見え方が変わってきます。
 写真は、昨年、高速道路の街灯が田に映る様子を、月に見立てて撮影したものです。イメージは、この写真のようになりますが、残念ながら月の登る位置、角度ともに、このようにはなりません。棚田の斜面に沿うように、月は東から出て西に沈みますので、この写真で言えば反対方向に月は見えます。

 昨年の田植え時期の撮影した映像が、こんな感じです。

棚田は日の出もまた絶景である

 月の入りを迎える前に、日の出の時間になります。東の山から、その神々しい日の光を浴びると、水の張った田全体が、美しく輝く光景をみることができます。

次回以降、今年の棚田の空撮模様を記事にしたいと思います。