2016年2月12日(金)に、デジタルハリウッド ロボティクスアカデミー主催によるドローンセミナーが開催されました。サービスロボティクスやこれからのロボット産業に求められる新たな人材像について語られた本講演の内容をレポートします。
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–「What is Service Robotics? #1 ~日本のドローン活用人材の展望~」と題されたイベントの会場は、デジタルハリウッド駿河台キャンパス。会場にはドローンに関心を持たれている社会人の方々が多く詰めかけていました。
まず最初に、進行役のデジタルハリウッド ロボティクスアカデミー 主席研究員の高橋氏よりご挨拶。
デジタルハリウッドは、昨年の秋からドローン分野のクラスを開校。安全運行に関する情報の提供や各種イベント開催など、デジタルハリウッドのドローンに対する取り組みについて説明がありました。
続いて、ミニサーベイヤーコンソーシアムネクスト事務局長も務められている、株式会社スカイコープソリューションズ代表取締役社長の酒井学雄氏の講演。
酒井氏はミニサーベイヤーコンソーシアムネクストにて、千葉大学野波研究室で開発された自律制御技術を利用した純国産ドローン「ミニサーベイヤー」の商品化を推進。
また、安全対策や電波法などへの対応に必要な様々な研究開発・実証実験も実施しており、コンソーシアムには既に200社弱が加盟しているとのこと。
今回は酒井氏の意向により、技術的な話ではなく、ドローンを活用した産業作りに主眼を置いた講演となりました。
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世界のドローン市場の動向
まず最初に、ドローンの語源の解説や20年近く継続されている千葉大学野波研究所の純国産ドローン開発の取り組み、ミニサーベイヤーの機体と仕様の紹介から始まり、続いて話題は世界のドローン市場の動向に。
酒井氏によると、マルチローターヘリコプターの心臓部となる自律制御技術を独自開発している企業は世界で約25社程度。国別に言うとドイツやカナダに会社が多いようです。価格帯についても国別に傾向があるとのことで、ドイツ製やカナダ製の産業用ドローンは1000万円以上と高価格帯が多い一方で、中国製のドローンは数十万から200万円程度の比較的低価格帯が多いとのこと。
また、世界におけるドローンの利活用に向けた取り組みについても各国でバラつきがあり、例えばアメリカはテロ対策の影響からか、特例以外は商用ドローンが全面飛行禁止になっている一方で、ドイツは一部地域で物流事業、フランスは一部地域で緊急時AEDや血液運搬試験を開始しているとのこと。中でも特に進んでいるのはカナダで、視界外飛行が可能になっており、さまざまな実証検証が進んでいるそうです。
日本はというと、2015年12月10日に航空法改正され、ドローンの定義や飛行禁止区域設定などのルール整備がされたばかりという段階ではあるものの、このルール整備をきっかけにこれから実証実験の事例が増えていくのでは、との見解が示されました。
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産業用ドローンの市場規模
気になる産業用ドローンの市場規模ですが、アメリカで2025年に820億ドル(約9.6兆円)、日本で2020年に713億円で、酒井氏によると点検や監視業務で約半数を占めるのではないか、との見解。ミニサーベイヤーはその市場に対して、2014年に約100台を出荷、2017年には4000台の量産体制を計画しているとのこと。
続いて、利活用が期待される産業分野の話題に。短期的には、橋梁点検やダム点検、ソーラーパネル点検、建築現場や土木工事現場の測量、農業分野への応用などが考えられ、例えば今までのやり方では2日ほどかかった点検や測量作業を2時間の飛行で完了するというように、既に目覚ましいコスト削減効果が上がっているそうです。
酒井氏は、点検や計測に必要とされる具体的な精度についても言及。最低限必要な精度としては、屋根壁補修判断では2mmの穴、RC構造物点検では0.2mmのクラックを見つける必要があるとのことで、今後ますます精度への要求が高まっていくのでは、とのことでした。
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発展可能性のあるドローン産業の分野
続いて、今後のドローンを活用した産業の発展に関する話題に。
現時点で産業として成立しそうな産業としては、
- 輸送・デリバリー
- 災害対策
- 空撮・測量
- 点検・メンテナンス
- 農業
- 資材管理
- 監視・警備・捜索
- 旅行・エンターテインメント
といった分野に分類されるとのこと。
特に現時点では先に触れられていた通り点検や測量分野のビジネスが伸びているとのことで、「橋梁点検」「ダム点検」「ソーラーパネル点検」「土木工事現場の測量」の事例が紹介されました。
「ダム点検」に関しては、今までダムの点検は週に一度の双眼鏡による点検と年に二回のクライマーによる検査だったところ、ドローンによる定期点検に切り替わりつつあるとのこと。また、「土木工事現場の測量」に関しては、レーザー測量と同等の誤差になるくらい精度が上がってきており、十分実用として使えるレベルになってきているようです。
その他の分野に関してもこれから伸びて行く可能性が十分にあるとのことで、ドローンが産業に与えるインパクトについて何度か強調して語られていました。
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ドローンの安全な運用についての取り組み
一方で、産業の発展のためにはドローンの安全な運用が欠かせず、「機体の安全」「技能の安全」「運用ルール」に合わせて、一番重要なのが「モラル」であることも強調。
2012年10月に設立されたミニサーベイヤーコンソーシアムでは、安全な運用を守る活動として、
- 安全ガイドラインの策定
- 利活用技術、ソリューションの研究
- 技能検定制度の運用
などに取り組まれているとのこと。
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東京オリンピックにおけるドローンの活用について
講演の締めくくりとして、2020年の東京オリンピックにおけるドローンの活用に話題が移り、「聖火の点火をドローンで行う、開会式にドローンを活用した演出を加える、などすることで、世界に日本のドローンをアピールすることが可能になるのではないか」との展望が語られました。
講演後の質疑応答では、多くの人から積極的な質問が投げかけられ、あっという間に2時間のイベントが終了。
日本では3月後半にJAPAN DRONE、4月後半に国際ドローン展が開催されるなど、2016年はドローンビジネスが一気に盛り上がることが予想されています。皆さまも「ドローンビジネス元年」をふまえ、ドローンビジネスへの参入を検討されてはいかがでしょうか。