第1回 まさに戦国時代?!日本のドローンの特許勢力図

 みなさん初めまして、株式会社DRONE IP LAB 弁理士の中畑と申します。今回から、日本のドローン産業を支える技術がどのように守られているのか、知的財産という側面からお話しいたします。

1.ドローン関連技術の特許出願件数

 まずは、そもそも日本で出願されているドローン関連技術ってどのくらいあるのかみていきましょう。下の図は2000年以降、日本に出願されたドローン関連技術の特許件数の推移を表したものです。

2012年~2013年を境に一気に増加傾向にあることがわかります。なお、特許出願は原則として出願日から1年6か月は非公開となります。従って、2016年のデータには本日時点で未公開となっている件数が含まれていることに注意はなければなりません。

しかしながら、未公開分が含まれているのにもかかわらず、このような件数となっていることからも、ドローン分野への特許出願が積極的に行われている(即ち、ドローン分野への”知財投資”がなされている)ことがわかります。

2.出願ランキング

 続いて、この分野のプレイヤーランキングをみていきましょう。2000年以降の累積出願を表したのが下の図です。実は、今回調査した特許のカテゴリ(国際特許分類:IPC)は、古くは軍事用途のミサイルや軍用機の技術、そして近年では、ラジコンヘリなどの技術も含まれております。今回は、2000年以降に出願された技術にはドローンの技術が含まれている可能性が高いという見立てに基づいて簡易的に調査を行っております。

 さて、出願件数でみた場合、上位10社のランキングは下の図のようになります。

 トップのボーイング社の内訳としては、飛行機やその付属品そのものというものもある一方で、小型の無人航空機(固定翼機等)に用いられ得る技術も含まれております。

 ちなみに、現在の特許のカテゴリには「ドローン」というものがありません(いずれできるのではないかと考えています)。従って、ドローンの技術だけを抽出するためには、この特許カテゴリで調査をした中から、一件一件の文献を目視で確認し、有人航空機や友人ヘリコプタ、ミサイルやロケット等に用いられる技術を除外する作業が必要となります。

 グラフに戻り、2位にランクインしているのは、みなさんお馴染みのDJI社です。

 上の図を見る限り、トップは日本の企業です。しかしながら、ドローンが広く一般に溶け込んできた2013年以降の特許出願ランキングを見てみると驚くべきことがわかります。

 下の図をご覧ください。ダントツに抜きんでているのはdjiです。そして、プロドローン、セコム、パロット、トヨタ自動車と続きます。それにしても、djiはアウェーの国にも関わらず、2位のプロドローンと大差をつけて圧勝していることがわかります。

 ところで、外国出願に必要なコストはだいたい「1か国100万円」というのがざっくりとした費用感となります。この基準に照らすと、djiは、2013年からの数年間で8000万円程度の予算を投下して日本での特許網の構築を試みていると推定することができます。

最後に、ドローンのどのような部分に特許が出されているのか、出願された技術に付与される特許分類からみていきましょう。ドローンの各要素技術をおよそ下記の図のような分類が付与されています。それぞれの記載を見るとわかるように、航空機のようなドローン以外にも適用することが可能であることがわかります。実際の特許調査の際は、これの分類を頼りにデータベース検索を行い、ドローン以外の特許出願を排除しています。

さて、初回は、ドローン関連技術の出願動向を数字周りから俯瞰してみました。初めて「特許」という分野に触れた方でも、「とりあえずレッドオーシャンになっていく」「ドローンは特許の塊になり得る」ということが理解いただけたかと思います。

次回以降は、ドローンが活用されているサービス分野(農業、測量、点検、災害、、、等々)毎に、具体的にどのようなものが特許になっているのか、実際の特許内容を例に説明していきたいと思います。