災害発生!その時ドローンは…ドローンによる災害支援活動事例や課題まとめ

東日本大震災が発生してから、今年で8年が経ちました。

2011年3月のあの日をいまだに忘れられない方も多いかと思いますが、その後も熊本地震や北海道胆振東部地震、また台風や豪雨、火山の噴火等々、大きな災害が毎年何件かは発生している状況です。昔に比べ自然災害の件数も規模も増しているのではないかと思ってしまうのは筆者だけでしょうか。

こうした災害が発生した際に、ドローンを活用しようとする動きが、近年活発になってきています。

ドローン活用が期待される領域

災害時のドローン活用が期待される領域は、大きく2つに分けられます。

  1. 救援活動
  2. 被害状況確認活動

1. は、災害発生直後に被災した人をすみやかに救助するための活動のことです。
一方で2. は、建物等の損壊状況を確認して、二次災害を防いだり、復興に役立てたりする活動のことをさします。

今回はこの2つの側面から、事例や自治体の取り組み、課題について考えてみましょう。

ドローン活用が進む被害状況確認活動

ドローン活用の実例が多いのは、実は2.の「被害状況確認活動」の方です。
例えば2016年4月に発生した熊本地震では、山岳部で土砂崩れや道路の損壊が発生し、車で現地に向かうことが厳しい状況の中、ドローンを使って状況を撮影することで正確な被害情報を把握することができました。
また、断層の様子や、熊本城天守閣の被災状況の確認のために、ドローンを使った上空からの撮影も行われました。

(出典:国土地理院)

その他、2017年7月に発生した九州北部豪雨や秋田豪雨災害でもドローンが活躍、「被災箇所の調査は速やかに概要を把握する必要があり、2次災害の危険性も伴うことから、ドローンによる調査が効率的」との報告がされるなど、災害発生時の状況調査の場面で多く利用されています。

このような災害時のドローン活用の取り組みに、自治体も着目しつつあります。
例えば今年1月、東京都足立区が、ドローン導入のコンサルティングを行うドローン・フロンティアと災害時におけるドローン活用の協定を締結しました。
災害時にドローンを飛行させ、上空から現場の撮影を行い、リアルタイムで区役所内の防災センターに映像を伝送、区の迅速な情報収集活動を助けるのが狙いです。
両者は今後、橋梁点検や人命救助など、あらゆる分野でのドローン活用を目指し、積極的に実証実験を行う予定としています。
足立区によると、民間のドローン会社との提携は、23区でも初の事例とのことです。

発展途上の救援活動

しかしながら、もう一方の、ドローンによる「救援活動」については、現時点ではまだまだ活発な状況とは言えない状況です。
Drone Mediaでも以前、災害によって孤立した病院へドローンにより物資輸送を行う想定の訓練についてお伝えしましたが、こういった実験・訓練が実施される一方、実際の現場では全般的に、ドローンはあくまで補助的な立場にとどまっている模様です。
おもな理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 飛行時間の制約があるため。 
    現在のドローンは、飛行時間(=電池の稼働時間)が20~30分程度の場合が多いようで、この時間内に捜索・救援活動を行うのは「短すぎる」との声もあるようです。
  • 二次災害の危険性があるため。
    都市部で災害が発生した場合にドローンを飛行させると、倒壊した建物や電線にドローンが引っかかる危険性があります。また、ドローンが墜落して人的・物的被害が拡大する可能性も否定できません。
  • 通信手段が確保できない可能性があるため。
    ドローンの多くは、コントローラーとの間の通信にWi-Fi(公衆無線LAN)やLTE回線を使っていますが、災害直後はこれらの通信手段が確保できず、ドローンの飛行自体が不可能となる場合が考えられます。

本格検討が始まったドローンによる災害時支援策

今後は、さきの足立区とドローン・フロンティアの例を始め、自治体や民間企業が実験を重ねながら、これらの課題をひとつひとつ解決していくことが望まれます。

「災害は忘れたころにやって来る」とも言います。自然災害の多い日本においては、こうした不測の事態に備える策のひとつとして、ドローンによる支援が本格的に検討されつつある状況です。