日本国内でドローンを飛ばすには送信機に通称、技適マークが付いているものが必要です。
これは日本の電波法に基づいて技術基準適合証明を受けている証であって、電波を飛ばすからには必須の要件。しかし、現実には「おもちゃのドローン」であっても並行輸入品が簡単に手に入るネット通販などでは、売る側も買う側も電波法を全くと言っていいほど気にしていないと言っても過言では無いでしょう。これは単に電波法の規制を受ける商品であることを「知らない」からです。
現在流通しているドローンを含めたラジコン用送信機には、主に2.4GHz帯の電波が使われています。その他にも無線LANやBluetoothといった、一般家庭で身近な製品にも数多く使われているのです。技術基準から外れた電波を不用意に飛ばすと、混信や妨害といった悪影響が出てしまう恐れがあるため、技術基準適合証明は必要なのです。
しかしながら、技術基準適合証明を受けるには1ヶ月程度の時間と、80万円程の費用が掛かると言われています。輸入販売する側からすると、時間と費用が掛かり過ぎのため、割にあわないのです。製品を輸入販売する側にとってみると、日本国内で電波を使用するモノを販売するのは意外と面倒なのです。ラジコン製品を扱う日本のメーカー各社は電波法を順守して啓蒙活動もしているのですが、ネット通販や並行輸入業者はそこまで気にしていないのが実情なのです。法を順守する企業は商品にコストを転嫁せざるを得ず、若干割高な価格となりますが、気にしない企業は安価に迅速に提供することができてしまいます。
最近ニュースになってしまいましたが、ドローンに搭載している5.8GHz帯映像伝送システムを使用して検挙された事例がありました。この帯域の電波は勝手に飛ばすことは許されていませんし、技術基準適合証明は受けること自体が出来ません。
「5.8GHz帯映像伝送システム」とは簡単に言ってしまうと、より綺麗な映像を送信することが出来るシステムです。2.4GHzと5.8GHzを比べた時、より多くの情報を送れるのが5.8GHzなので、ハイビジョンや4Kの映像が欲しい時は大抵5.8GHz帯の映像伝送システムが使えれば簡単なのです。
しかし、この5.8GHz帯、高速道路や首都高速で使われているETCシステムに使用されています。皆さんの車にもETCが搭載されていれば、5.8GHz帯電波を送受信しているのです。その近くで5.8GHz帯映像伝送システムを使ってしまったらどうなるか・・・恐らく使用者は考えてもいなかった筈でしょう。
この例を見ても、販売者は海外で開発・販売された良いシステムを見つけ、良心的な価格で販売しているのかもしれません。しかし、使用者は意図せず罰せられることもあります。
現在のドローン・ブームは電波法という規制に数多く縛らていることをあまり知られていません。ドローンの普及が急激に進んでしまったために、これまではあまり表面化しなかった法律や規制の問題点が一気に噴出した格好です。
どのように規制が進んでいくのか危惧されていますが、ある程度の規制は必要でしょう。都内の人混みの中で、縦横無尽に何機も飛んでいたらと考えると怖いですよね。高度制限や飛行禁止区域の設定も当然必要でしょう。
むしろもっと必要なのは技術開発面での支援や電波法の規制「緩和」です。現在日本のドローン開発は後手に回っていると言われています。正直なところ、ここまでドローンが新たな市場になるとは誰も考えていなかったのではないでしょうか。現在販売されているドローンのほとんどは既成技術で組み立てられています。6軸ジャイロ(3軸加速度+3軸角加速度センサー)、シンプルな筐体、モーター、送信機、映像システムといったシステムは小型化されましたが、ほとんどはすでにあった技術です。今後、日本の技術力を用いて、画期的な製品を生み出すためには様々な企業同士の共同開発も必要になってくるでしょう。例えばGPS+ジャイロで高精度な測位が得意な企業が先導すれば、本格的な自動飛行技術も安価で採用出来ることにつながります。
より爆発的な普及を目指すには、絶対に落ちない技術も必要です。天候に左右されない防水性や耐熱性も求められます。このような技術開発力は本来、日本が得意とする分野です。大学の研究機関などでは先行して開発が進んでいますが、商用化するにはやはり企業の力が必要です。それと同時に、人・モノに危害を加えない・加えさせない規制を強化していくべきでしょう。
官民一体となって世界をリードできる技術開発を行え、技術基準適合証明に掛かる手間・料金の緩和といった土壌づくりこそが、もっとも必要な規制と緩和ではないでしょうか。