日本中、いや世界中の絶景をドローンで撮影したい。空撮をする者にとっては、これはある種の憧れ・夢であると言ってもいいでしょう。 その夢を追い続けてみたい。50歳になってからドローンを始めた筆者は、この2年で、日本の様々な場所で空撮を経験させていただくことができました。 その過程で、発見したことや新しく知ったことは、とても貴重で心躍るものばかりでした。 そんな感動を、多くの人と分かち合い、ドローン空撮の魅力を少しでも多くの人に知ってもらいたい。 この連載を通じて、1人でも多くの方にドローン空撮に興味を持っていただきたい。本連載「ドローンクルーズ」シリーズは、そうした思いで筆を走らせています。
ナガンヌ島に向かう
沖縄県那覇市。泊港から高速船で20分ほどの位置。
ほぼサンゴでできていると思われる、細長い島がナガンヌ島です。ここは無人島で、人は住んでいません。島の端から端までは約1km。秋葉原から神田までと同じ距離。ドローンでぐるっと一周しての撮影も十分できる面積で、島と海とサンゴ礁のコントラストが大変美しい島です。
意外に様々なメディアに取り上げられていて、WANIMAのPVであったり、ジャニーズの嵐を起用したJALのCMロケ地としても有名な場所です。
この2月という時期は、島の近海に親子クジラが出没するということで、私たち一行はそれぞれが愛機を持って沖縄に乗り込んだのでした。
クジラの現れる時期
クジラが現れるのは主に2月頃。3月末くらいまでは現れますが、遅くなると見つけることが難しくなっていくので、3月中旬頃までがピークになります。
クジラは子育てのために沖縄の海にやってきます。子育てに最適な環境があるのでしょう。出没するのは親子クジラになります。一頭で泳いでいる方が珍しいです。
クジラの見つけ方
当然ながら船からクジラを見つけるのですが、海に慣れた船長とスタッフが、仲間の船との無線交信で目撃情報を共有したり、ソナーを使って船の近くの海底を探索したりと、私たちの知らないところでもクジラを見つけるための努力をしてくれています。最終的には長年の勘なのかもしれません。
クジラが近くに来て浮上してくると、ブロー(潮吹き)が上がります。このブローを見つけられるかが、クジラと出会えるかどうかの鍵になります。
ブローが上がったら、ドローン撮影隊は、即座にその地点に急行します。
ブローが上がった位置は、船から見てどの方向かで示されます。「11時の方向!」とか、「後方、5時!」とかですね。見つけると船首をそちらに向けて追ってくれるので、自ずと正面12時の方向になるのですが、見つけた直後の方向指示はそんな感じです。
クジラ空撮で必要なドローンの準備
ここで、クジラ空撮のために準備しなければいけないものを、いくつか上げておきましょう。
ドローン本体
船上での、特に2月の沖縄海上での空撮は、凪の時は期待できず、風、波はそこそこ強いと思っていいでしょう。そのため、ドローンはハンドリリース、ハンドキャッチになります。
そうなると、DJI製品で言えば、ハンドリリース・ハンドキャッチしやすいPhantomシリーズになります。Mavicシリーズで撮影するならランディングギアなど、手で持てる部分を付ける必要があります。
バッテリー
満充電のものを5〜6個あると、丸1日のクジラ空撮で足りるかと思います。船でも充電できますが、最初から用意しておいた方が良いです。
NDフィルタ
クジラ撮影に限らず必須のアイテムですが、日差しが強くなることもあるため、できればND4からND32まで、そしてCPLフィルタも揃えておいた方が安心です。できれば、撥水加工されたものが良いかと思います。
マイクロSDカード
複数枚必要ですが、特に、想定しているフライト回数分の枚数を用意し、バッテリー交換のたびに交換することをお薦めします。これは、万一海にロストした場合に、100%回収は不可能になるため、せめてそれまでに撮影した映像くらいは残そうという配慮です。
クジラ空撮で必要なドローンの設定
ここで、クジラ空撮で必要なドローンの設定をご紹介します。
フェールセーフ
ホバリングに設定します。RTH高度は30m程度。
リターントゥホームに設定しても、自分たちの船が移動しているため、ホームポジションが定まりません。万一のロスト時のためのフェールセーフですが、すでに遠くなってしまったホームポジションに帰られるよりは、少しでも撮影ポイントに近いであろう現時点の位置でホバリングさせるように設定しました。
もし、プロポの位置(パイロットの位置)に戻せる機能が付いているなら、その設定でも良いかと思います。(機体未接続状態でプロポの位置が正確にわかるかどうか、これは実験したいところですが。)
バッテリーの残量ワーニング設定
デフォルトは30%となっているかと思いますが、これを40%にします。海上でクジラを追うと、想像以上の距離を追っていることがあります。場合によっては、戻ってくるのもギリギリの距離まで離れてしまったり、風上に向かって戻ろうとするような場合など、バッテリー容量に余力を持たせた方が良いため、40%としています。
センサー類
センサー類は、障害物センサーと、ビジョンセンサーを切ります。これは、ハンドリリース・ハンドキャッチの動作時にセンサーにひっかからないようにするためです。
さて、今回はとりあえずここまでです。
次回は、ナガンヌ島の撮影も交えながら、クジラ空撮のポイントをお伝えしていくことにしましょう。
クジラ空撮の醍醐味
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