DJIは、無人航空機(UAV)の新製品「MATRICE 200シリーズ (マトリス 200、以下M200シリーズ)」を発表しました。M200シリーズは、空撮による点検や検査、データ収集などの産業利用を対象としたエンタープライズ向けのプラットフォームです。耐候性と防水性を備えた折りたたみ式の機体は、持ち運びも組み立ても容易に行えるため、様々な環境下で行われる現場作業に適しています。また、DJI初となる上向きジンバルマウントを搭載したことで、橋梁や鉄塔、電波塔などの底面や裏側の点検・検査が可能になりました。M200シリーズは「ZENMUSE X4S」と「ZENMUSE X5S」カメラのほか、「ZENMUSE Z30」や「ZENMUSE XT」カメラに対応し、高性能のズーム撮影や赤外線撮影も可能です。パイロットは前方向きFPVカメラから、カメラオペレーターはメインカメラの映像を、デュアルコントローラーから確認できます。さらに、機体の前部・上部・下部の障害物回避センサーと、近くを飛行する有人機の飛行位置情報を受信できるADS-B受信機により安全性を高めています。デュアルバッテリー構成により、カメラを搭載した場合でも最大35分の飛行が可能です。
M200シリーズは、産業向けのドローンとして正確かつ安全、効率的な空撮データ収集を下記の業務などで実現します。
・インフラの点検および検査
送電線や通信電波塔、橋梁などの点検にM200シリーズを活用することで、現場から離れた場所で点検や検査を行えるため、作業の安全性を確保できます。
また、建物や道路、橋梁の損傷や不具合をミリ単位でリアルタイムに特定し、作業をより安全で効率的に行うことが可能です。
・エネルギー施設の点検および検査
M200シリーズは高い安定性にくわえ耐候性と防水性を備えるため、巨大な送電網を極めて緻密なレベルで視覚化できます。
さらに、垂直型のインフラ設備である風力タービンや海上の石油掘削施設などの点検・検査を、あらゆる角度から行えます。
エネルギー施設のメンテナンスに対し、経済的なコストと作業時間の削減が期待できます。
・建設現場での測量・地図作成
M200シリーズは、厳しい条件下に耐えられる頑丈なプラットフォームです。測量や地図作成などの作業に対し、天候やその他の様々な外部要因に左右されることなく、進捗やワークフローの確認、リソースのより効率的な利用を可能とします。
・捜索救援活動
M200シリーズは、ビジュアルセンサーや赤外線センサーを搭載し、火災や自然災害における捜索救援活動の潜在的な危険性を認識します。現場責任者は、M200シリーズが収集したより詳細なデータを基に判断が可能になるため、救助を待つ人命や損壊の恐れがある建造物を守り、捜索救援活動にあたる人員の危険性を最小限に留めます。
その他の事例についてはこちら
http://www.dji.com/matrice-200-series/applications
ラインナップ
M200シリーズには、「M200」、「M210」、「M210 RTK」の3つのタイプがあります。スタンダードタイプのM200は、単一下方ジンバルマウントを搭載しています。M210は、単一下方ジンバルマウント、デュアル下方ジンバルマウント、単一上方ジンバルの複数のペイロード構造です。また、サードパーティ製センサーとアクセサリーに対応する追加の接続ポートがあります。さらに、機体上部に取り付けることが可能な追加のセンサーとペイロードに対応する予定です。M210 RTKは、センチメートル単位の高精度なナビゲーションを実現する「D-RTKモジュール」が使用できます。
安全性と信頼性
M200シリーズは、IP43等級に準拠し劣悪な環境下でも使用できる堅牢な設計となっています。コンパス、GPSシステム、デュアル内蔵計測ユニット(IMU)、そして3つの気圧計を含む20個以上の内蔵センサーを搭載します。ジンバルコントローラーは保護のために機体と一体化し、ドリフトを防ぎます。また、障害物を回避するために、機体の下部と前部に2台のステレオ・ビジョンシステムと上方向赤外線センサーを搭載しています。さらに、冗長化バッテリーシステムによりバッテリーが順番に交換されている間も機体に電源を供給することが可能になりました。
M200シリーズは内蔵型のADS-B受信機である「DJI AirSense」を搭載しています。これにより、操縦者には、近くを飛行するADS-Bトランスミッターを備えた有人飛行機の位置や高度、速度情報がリアルタイムで自動提供され、安全に飛行運用をすることができます。AirSenseは、有人飛行機が飛行している空域でのより安全で効率的な空域利用を実現します。
また、フライトコントローラーは、2つのIMUと1つのGNSSユニット、分析冗長システムを合わせた一体型のコントローラーとなっています。2つのIMUをシームレスに切り替え、最新の診断アルゴリズムとあわせて信頼性と精度を維持します。
DJIフライトマネジメント
「DJI GO 4」アプリに加えて、M200シリーズは新しい「DJI Pilot」アプリに対応しています。DJI Pilotは、産業利用における飛行体験とユーザー体験を最適化するために設計され、「DJI GS Pro」アプリでの飛行計画の立案に加え、インターフェースを数回タップするだけで複雑なフライトタスクを計画することができます。
M200シリーズは、DJIのモバイルSDKとOnboard SDKに対応しています。プログラマーは、飛行計画やデータ収集および分析のためのカスタマイズソリューションを構築できます。
DJI Pilotは、ウェブベースのソフトウェアパッケージ「DJI FlightHub™」に対応し、現地にいるチームは、収集したリアルタイムデータを現場にいない担当者とインターネット上で共有することが可能です。例えば、リモートの緊急対策本部が初動対応チームの活動記録を把握したり、資産管理センターがグローバルなインフラネットワークの検査を管理することなどが可能です。また、ユーザーはDJI FlightHubで複数のドローンを活用した飛行計画を立案し、それぞれの機体のステータスを追跡することができます。これにより、遠隔にある対策本部においてもライブフィードを同時に監視し、ジンバルとカメラを遠隔制御することができ、ウェイポイントとダイナミックなジオフェンシングを活用して事前に飛行計画を立てることも可能です。
インテリジェントフライト機能
M200シリーズのコンピュータービジョンはインテリジェント・フライトモードを活用したデータ収集を実現します。これらの機能により、被写体を追尾しながらのズームなど、下記のような高度な撮影が可能になります。
・スポットライトモード:機体を自由に飛行させながら、カメラが被写体に照準
・ポイント・オブ・インタレスト:被写体の周りを滑らかに旋回
・トライポット:位置や角度を精密に調整し、狭い場所での飛行も安全に正確に実現
・アクティブトラック:被写体を認識し、フレーム内に維持したまま飛行
アクセサリー
M200シリーズは、DJIの「Lightbridge 2」システムを採用し、使用地域の法規制に従い、最大7kmまでの範囲に対応します(日本では4km)。ライブビューの解像度は最大1080pで、マスターコントローラーとスレーブコントローラーの間で、約100mの距離を保てます。
また、周波数を2.4GHzまたは5.8GHzから選択可能で、ノイズカット機能を備えます。さらに、M200シリーズは95Whの標準バッテリーと、最大飛行時間38分を実現するより強力な174Whバージョンの2種類のバッテリーを提供します。
M200シリーズのペイロード
M200シリーズは、単一下方ジンバルマウント、デュアル下方ジンバルマウント(M210)、単一上方ジンバルマウント(M210)の3種類のペイロード構成があります。
DJIのZenmuseカメラシリーズは、空撮向けに最適化され、機体のジンバルとフライトコントローラーで直接通信します。重量と画質のバランスが必要な状況に適したZenmuse X4Sは、1インチ、20メガピクセルのセンサーを搭載。ダイナミックレンジは11.6ストップ、焦点距離24mm、F値はf2.8-11に対応します。また、シャッタースピード1/2000のメカニカルシャッターにより、ローリングシャッター現象を回避できます。Zenmuse X5Sは、大型Micro 4/3センサーを搭載し、20.8メガピクセル、ダイナミックレンジは12.8ストップです。広角からズームまでの8種のレンズに対応しています。
FLIRの最先端赤外線イメージング技術が統合されたZenmuse XTは、分析と距離測定に理想的な高感度赤外線画像が撮影できます。Zenmuse Z30は、最大30倍光学ズームと6倍デジタルズームを搭載した史上初の空撮カメラです。画像データを迅速に収集することで、人的または設備的なリスクを排除します。
DJI「MATRICE 200シリーズ」 | |
取り扱い機種 | M200、M210、M210 RTK |
発売日 |
DJI Enterprise正規代理店で先行予約受付中、 |
価格 | 未定 |
※その他、詳細についてはメーカーHPをご参照下さい。
DJIホームページ:http://www.dji.com/ja