ドローンによる業務の完全自動化を目指す株式会社センシンロボティクスが、外壁点検や劣化診断を行うベイシス株式会社とドローン点検サービスにおける業務提携を開始したと発表しました。
今回の業務提携は、ベイシスが行う外壁点検や劣化診断において、センシンロボティクスが提供するドローン自動航行プラットフォーム「SENSYN FLIGHT CORE」を導入し、ドローンの自律航行による点検を行うというもの。また、離発着と充電を全自動運用で行うドローンポート「SENSYN DRONE HUB」の設置・保守を含めた共同提供も行います。
今回の提携により、これまでゴンドラや足場を架設しなければ確認出来なかった現場でも、ドローンを活用することでタイル1枚1枚の剥落も見逃さずに検出することが可能になりました。また、ドローンに搭載する赤外線カメラを使うことで、目視では発見が困難だった不具合も確認することができるようになりました。
さらに、「SENSYN FLIGHT CORE」を使いドローンの自動航行を行うことで、可視光・赤外線カメラを使った自動画像解析、点検結果レポートの自動作成を行うことができるようになります。自動航行により、作業者の見落とし・ミスの低減・点検の負担軽減を実現。外壁点検の他、鉄塔や送電線等の点検業務も行います。
本提携の背景
日本国内では近年、少子高齢化と労働人口減少で発生するインフラ従事者の担い手不足が課題になっていました。
外壁点検は通常、ゴンドラや足場を用いた専門の技術者による打音検査で行われています。しかしこの方法は、作業者の墜落による人身災害発生のリスクや高額の検査費用がかかるといった課題があります。
今回の業務提携は、ドローンやICTを活用して高所作業の安全かつ効率化を促進することで、日本におけるインフラ従事者不足の課題解決を狙っています。
ドローンにおける点検業務の少人化・コスト削減・作業効率化
従来型の点検・調査では、足場の組み立てや高所作業車の発注など、多くの人力・コストが必要でした。人力で行う点検作業の手間と時間を大幅に短縮することができ、約1/3程度に削減することが見込まれます。
事例 ※ベイシス調べ
物件名：都内某高層マンション
階／戸数：30階／約500戸 築年数：13年調査目的：大規模修繕工事前の劣化診断調査
●ロープアクセスによる打診調査
・費用：120万円～200万円
・日数：7日間（4名体制）
●ゴンドラによる打診調査
・費用：250万円～300万円
・日数：5日間（4名体制）
●ドローンによる空撮調査
・費用：150万円～200万円
・日数：2日（3名体制*） *操縦士・アシスタント・安全管理者
インフラ点検におけるドローン活用の必要性
インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2019』によると、国内のドローンビジネス市場規模において、2018年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は931億円と推測され、2017年度の503億円から428億円増加しています（前年比85％増）。2019年度には前年比56％増の1450億円に拡大し、2024年度には5073億円（2018年度の約5.4倍）に達すると見込まれます。
最も成長が見込まれるインフラ点検分野は、2018年度は43億円ですが、2024年度には年間1,473億円と想定されており、現在の13倍のマーケットになる見込みです。
また、不動産経済研究所「超高層マンション市場動向2019」によると、2019年以降に完成を予定している20階以上のいわゆる「超高層マンション」は、全国に300棟あり、1棟平均450万円で点検業務を受託すると13.5億円の売上規模になると見込まれます。
背景には、日本において少子高齢化による労働人口減少が深刻化していることが挙げられます。
国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口（平成29年推計）』によると、65歳以上の高齢者の人口は2020年の3619万人が2060年に3540万人とほぼ横ばいなのに対し、生産年齢人口（15～64歳）は2020年の7406万人が2060年に4793万人となり、40年間で約３分の１に相当する約2600万人が減ると言われています。人口規模でみた日本の市場全体は4分の3に縮む上、そこにモノやサービス、社会保障を供給する国内の担い手はそれ以上のペースで3分の2まで縮小されると見込まれます。
特にインフラ整備、メンテナンスの担い手は若手入職者の減少、高齢化が顕著。55歳以上が約3割を占める一方、29歳以下の若手が約1割。全産業に比べ、高齢化と若手の比率の低下が著しく進行しています。
こうしたデータから、インフラの点検という課題に対してドローン活用が有効であることが伺えます。
