産業用ドローンの実用化が目に見えた「Japan Drone 2018」レポート

一般社団法人日本UAS産業振興協会(JUIDA)は、3月22日(木)から3日間にわたって、幕張メッセでドローンに特化した国際展示会&カンファレンス「Japan Drone 2018」を開催しました。

今年で3回目を迎えるJapan Droneは、日本を代表するドローン関連の企業や団体が多数出展し、その年のドローン産業のトレンドがわかるコンベンションとして毎年大勢のドローン産業に関わる来場者でにぎわいます。今回は昨年より30社以上多い160の企業、団体が出展し、入場者数も3日間で1万1440人と、前年より1800人以上増え、盛況なコンベンションとなりました。

企業・団体のブース出展のほか、国際会議場では連日海外から招いたドローン業界のキーパーソンによる国際カンファレンスや、国内ドローン企業によるセミナーなどが開かれました。また、Japan Drone 2018に合わせてムービーコンテストやビジネスコンテストも開催。3月23日(金)にはJUIDAとデジタルハリウッドRobotics Academyが共催した、「Drone Movie Contest 2018」の表彰式が行われ、伊藤広大さんの「NORTHERNMOST – travel around hokkaido, Japan」がグランプリ&ドローンエモーション賞に選ばれました。

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3月24日(土)には日本初となる、ドローンを使ったビジネスアイデアのコンテスト「ドローンビジネスチャレンジ」の表彰式を実施。優秀賞として石村圭史さんの「ドローン禁止情報の自動収集・共有サービス」と、木村美砂さんの「三宅島×ドローン」が選ばれました。また、毎年、過去一年間に発表された最も素晴らしいドローンやドローン関連サービスを選ぶ「Best of Japan Drone Award 2018」の表彰式も行われ、6つの部門賞が選出されました。

DJI JAPAN

 民生用からスタートし、今や産業向けにも多くのドローンをラインナップしているDJI JAPAN。今年のブースはそんな産業用ドローンを前面に押し出した展示となっていました。DJI JAPANとしては汎用産業用ドローン「MATRICE 200/210」を展示。この機体は本展示会のBest of Japan Drone2017」アワードで「ドローン機体部門」を受賞しています。

IP43の防塵防滴性能を備えるなど堅牢性が高く、さまざまな産業用途に利用できるMATRICE200シリーズ(写真はMATRICE210)

DJIの代理店のひとつであるスカイシーカーが出展していたのが「QS8」。DJIの汎用産業機「WIND-8」をベースに、災害時の救援物資などを収納するコンテナを備えていて、現場上空になるとコンテナ下面を開けて物資を投下します。その際、物資が壊れないように、空気入りのクッションを備えています。また、送信機と機体間の電波が遮断されても設定した目的地まで飛んで自動着陸できる、オンボード制御基盤を搭載しています。

DJIの「WIND-8」をベースにした物資輸送用ドローン「QS8」

Japan Droneの初日に、測量用ソフトのスタートアップSkycatchと共同で開発した高精度測量用ドローン「EXPLORE1」を、建機メーカーであるコマツに1000台納入したと発表したDJI JAPAN。MATRICE100をベースに作られたこの機体は、SkycatchのRTKベースステーション「EDGE1」と連携しながら飛行することで、簡単に、かつスピーディに現場の高精度3Dモデルのデータを得ることができます。EXPLORE1は白い三角錐フォルムのカウリングをまとい、EDGE1ベースステーションとのパッケージ性を打ち出しています。

コマツに1000台納入されることとなった「EDGE1」(左)と「EXPLORE1」(右)

EAMS LAB / EAMS ROBOTICS(イームズラボ/イームズロボティクス)

 今年3月初旬に「EAMS LAB(イームズラボ)」と商号を変更することを発表した元エンルートラボ。ドローンエンジニアである伊豆智幸氏を中心に、UAVだけでなくAIや画像認識の技術を駆使したUGV、UUVといったさまざまなドローンを開発してきました。そんなエンルートラボが、親会社からの増資を受ける形で改組。新たにイームズラボとしてこの春からスタートすることになりました。

UAVだけでなくUGV、USVなどさまざまなドローンを展示するEAMS LABのブース

今回のブースではそんな新生イームズラボの数々のドローンを所狭しと展示。産業用としては今最も注目されている農薬散布ドローンを中心に、測量用や点検用など、さまざまな機体を置いていました。いずれもこれまでエンルートラボで開発していたモデルではありますが、型番を刷新すると同時に、機体の胴体にあたる部分にヒートシンク上のアルミ削り出しのパーツを用いるなど、今後デザインにもこだわって開発を進めるとのことです。

農薬散布用ドローン「UAV-E6110FA」

興味深い機体は「オムニコプター」と名付けられた、一見するとシンプルなオクトコプターです。ただし、この機体はローター面が互い違いに30度ほど傾いているのが特徴です。この傾きによって水平方向に対して推力を得ることができ、水平方向の移動で機体を傾ける必要がありません。そのため、橋梁の床板の点検など、水平方向の移動が多い作業に向いているといいます。

ローターの回転面が傾いている「オムニコプター」

エアロネクスト

「4D Gravity」という新しいドローンの技術を3月初旬に発表したエアロネクストは、この技術を採用したドローン「Next VR」と「Next DELIVERY」を展示していました。この技術はドローンの姿勢が変化した時に、重心に影響しないように制御するというもので、ドローンが飛行するときの燃費(電費?)や速度、信頼性が高まるとのことです。そのひとつは物流用ドローンで、荷物を入れた箱を機体の下にジンバルを介して吊り下げる形で搭載します。この荷物の懸架位置が重心にあるため、機体姿勢が変わっても重心の影響を受けません。また、荷物を降ろした場合には、荷物に釣り合う位置にあったバッテリーの位置を動かして、空荷状態でまた釣り合う状態を作り出すというものです。

物流用ドローン「Next DELIVERY」

 もうひとつは360°VR映像が撮影できる「Next VR」。これは機体の中心を貫いた縦棒が、機体姿勢に関係なく常に垂直を維持します。この棒の上下に360°カメラが付いているため、機体の姿勢変化でカメラのアングルが変わることがなく、また、機体が写り込むことがありません。これら2機の機体に採用されている重心制御技術「4D Gravity」は、Best of Japan Drone2018アワードの、ドローン関連テクノロジー部門を受賞しました。

機体中心に360°VRカメラを載せた棒が貫通する「Next VR」

ブルーイノベーション

ブルーイノベーションは、Japan Drone開幕直前に発表した、オリジナルドローンによるパイロット支援システムと、スイスFlyability社の屋内点検用ドローン「Elios」を公開。ブース内に設けたフライトケージで、そのデモ飛行を行っていました。パイロット支援システムは、中国のドローンメーカーAEE社と連携し、同社の機体を納入先に合わせてカラーリングやロゴなどでカスタマイズし、その機体を使って飛行したログをアプリ上で記録できるというもの。このログは単に飛行経路だけでなく、機体の姿勢やパイロットがどのように舵を打ったか、といった操縦ログも残せるのが特徴です。後でその操縦ログを視覚的に確認することができるため、操縦技術の向上に役立つとのことです。

ブルーイノベーションオリジナルに仕立てられたAEEのドローンとアプリの画面
ブルーイノベーションオリジナルに仕立てられたAEEのドローンとアプリの画面

もうひとつのドローンのメーカーFlyability社は、スイスのローザンヌに本拠を置く、点検分野に特化したドローン開発のベンチャー企業で、JUIDAは同社と業務提携を結び、屋内の特に狭い空間での飛行が得意なドローン「Elios」を使って、屋内点検分野でのソリューションサービスを展開していくとのことです。Eliosは約40cm程度のガードに包まれたドローンで、GNSSの電波が入らない屋内でも安定した飛行が可能。周辺にぶつかったとしてもケージがあるため、対象物やドローンが損傷することはまずありません。両脇にLEDライトを備えたカメラは、0.2mm/ピクセルの撮影が可能で、機器が並ぶ工場やパイプラインといった狭い環境で写真撮影による点検作業ができます。

Flyability社の狭所点検用ドローン「Elios」

ブラザー工業

 一部のドローンパイロットの間で愛用されているのがヘッドマウントディスプレイ(HMD)。これまでWD-200AというHMDを販売してきたブラザー工業/ブラザー販売は、3月上旬から新たに販売を開始した「エアースカウターWD-300A」を出展。前作でも多かったドローン操縦者の声を開発に取り入れ、従来品よりディスプレイの画角を約1.44倍に拡大し、ヘッドディスプレー部分をIP54準拠の防塵防滴仕様にするなど、大幅な改良が加えられています。

エアースカウターWD-300A

とりわけ、ドローンユーザーに支持されていたのはディスプレイの画像の大きさとその見え。従来比約1.44倍の対角約25.6°となったことで、目から離しても見やすいだけでなく、明るくシャープな720pの高解像度液晶パネルの採用で、視線をドローンから外してHMDに映した時の視認性も大幅に向上しています。2月上旬に発表されたリリースに出店が掲載されていたこともあって、ブラザー工業のブースには多くの来場者が集まっていました。

従来比で約1.44倍のディスプレイ。従来モデルの対角約17.8°から約25.6度に拡大

トプコン

光学機器大手のトプコンは、測量に欠かせない同社のトータルステーションとドローンを組み合わせ、標定点の設置や計測を省いて精密な空中写真測量が行える「TSトラッキングUAS」を展示。これは、一般的な機体のGNSSとRTKを組み合わせた方法に対して、カメラに専用のプリズムを取り付けることで、自動追尾トータルステーションが飛行中のドローンを常に追って位置を正確に把握するため、機体の揺れなどの影響を受けずに高精度な計測ができるというものです。これまで、システムのドローンとしてエンルートの「QC730-TS」を採用していましたが、新たにDJIのMATRICE600PRO仕様を試作品として展示していました。

TSトラッキングUASに新たに加わるDJIのMATRICE600PRO仕様。写真右のトータルステーションがカメラに付いたプリズムを常に捕捉。